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企画・設計・運営を一気通貫に手掛け、MUJIホテルなど話題の施設を世に送る。たとえ立地条件が厳しくても、それを補って余りある付加価値をつけ集客するノウハウが強みだ。

低価格も実現
東京・新宿で開業した温泉旅館では、客室をコンパクトにしつつも、共用部を充実させ豊かな空間と低価格を両立。左は梶原文生会長(写真=村田 和聡)

 数寄屋門をくぐり、あんどんの明かりに誘われるように石畳の小道を進む。館内は和紙や無垢の木材をあしらった和風ながらモダンな雰囲気だ。ここは「ONSEN RYOKAN 由縁 新宿」。東京・新宿、日本を代表する繁華街のど真ん中で、のれんを掲げる温泉旅館だ。意外性のある立地が話題を呼び、2019年5月の開業以来、稼働率は90%を超える。

 手掛けるのは、梶原文生会長が率いるUDS。入居希望者が話し合いながら共同住宅をつくるコーポラティブハウス事業で1992年に創業したのがルーツだ。現在は事業を商業施設やホテルの企画・運営に拡大。子ども向け職業体験施設「キッザニア」や、滋賀県のアンテナショップ「ここ滋賀」などに関わり、最近では良品計画からコンセプトの提供を受けて銀座と北京で「MUJIホテル」を手掛け、注目を集めた。

滋賀県のアンテナショップ「ここ滋賀」(東京・日本橋)も手掛ける。地域活性化への思いも強い(写真=村田 和聡)

 親族に経営者や建築家がいた影響もあって、幼いころから起業と建築に関心があったという梶原会長。89年に東北大学工学部建築学科を卒業すると、実務経験を積むために「3年で退社する」と宣言してマンションデベロッパーのリクルートコスモスに入社した。

社会人1年目でマンション購入

 建設や不動産業のビジネスについて詳しく知りたいと考え、マンションも購入してみた。社会人1年目のことだ。実際に自分が住む側になると、間取りや内装の変更が自由にできないことや、中間マージンの高さといった売り手側の都合ばかりを感じ、住み手の意向がほとんど反映できないことに大きな不満を覚えた。

 なにより気になったのは、廊下やエレベーターですれ違っても挨拶すらしない人が多いこと。「コミュニティーがない場所では、子育てなんてとてもできないと思った」という。

 こうした問題の解決策としてたどり着いたのが、当時ドイツやスウェーデンで普及していたコーポラティブハウスだった。事業者ではなく入居希望者がつくる組合が建物の設計や土地の取得などを行う。住み手の意向を反映できるだけでなく、売れ残りのリスクがないため、広告費はわずかで済み、営業社員やモデルハウスも不要なのでコストを抑えられる。