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アナログレコードのブームを追い風に、斜陽だったレコード針の販売量が急伸。独自の研磨技術を応用して事業領域を拡大し、ブランド力を生かしてさらなる成長を図る。

手作業で微細加工
従業員の7~8割は女性。顕微鏡を見ながらレコード針の製造と検査を行う。きめ細かい作業と根気が求められる。左上はレコード針と針先端部分の拡大写真

 アナログレコードの販売が世界的に伸びている。日本でも歌手の星野源や、アイドルグループ「ももいろクローバーZ」らがレコード盤で曲を出しており、レコードブームといえるほど活況を呈している。

 日本レコード協会によると、2018年の国内レコードの生産量は111万枚で、09年からの10年間で約10倍に拡大。CD販売のタワーレコードは19年3月、東京・新宿にレコード専門店を出店したほどだ。

 このレコードブームを支えているのが、レコード針の生産量で世界で約9割のシェアを誇るナガオカだ。

 1980年代以降、レコードからCDへと音楽記録媒体の主流が変遷し、他社が次々と撤退するなか、レコード針の生産をやめなかったことが功を奏した。

宝石加工からレコード針製造へ

 同社の源流は、宝石加工にある。40年、サファイア、ルビーなどで時計の軸受け石を作る会社として創業した。戦後、宝石加工技術を応用して「蓄音機に使うレコード針を作れないか」と要請を受けてから、レコード針の試作を始めた。

 56年、宝石を削る技術を駆使した人工ダイヤモンド製のレコード針の製造に日本で初めて成功。本格的な生産が始まった。

 同社が他社の追随を許さないのは、針の基板となるチタンなどの超硬合金と、針の先端となる人工ダイヤモンドを接着する技術だ。超硬合金に、極小のダイヤモンドの粒を乗せ、銀ろうで固めて真空溶接炉で接合する。この時の炉の温度調整などが独自技術だ。こうして接着したダイヤモンドを、最後に人の手で削ってレコード針に仕上げる。針は長さ1mm、直径0.25mmほどになる。職人が顕微鏡をのぞいて行う非常に細かい手作業だが、宝石の研磨技術をここに生かした。

 同社のレコード針は、高音質なうえに価格も手ごろだったため、業界のスタンダードになっただけではなく、一般の音楽愛好家にも受け入れられた。

日経ビジネス2019年7月8日号 76~77ページより目次