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飲食店の予約情報を簡単に一元管理できるサービスで、市場を開拓。人手不足や収益向上など外食業界が抱える課題に、ITで応える。

誰でも簡単に使える
予約状況が一覧でき、予約客ごとの来店履歴や好みなども記録できる。誰でも操作しやすい画面で、予約管理や配席を効率化。新人でもハイレベルな接客が可能になる(写真=陶山 勉)

 予約・顧客台帳システムを使うことで、入店して間もないスタッフでも、一歩踏み込んだ接客ができるようになり、常連のお客様が増えている」。そう話すのは人気レストラン、KNOCK東京ミッドタウン店の西康弘店長。同店が導入したのは、ITベンチャーのトレタが飲食店向けに開発した予約や顧客情報の管理が簡単にできるクラウドサービス「トレタ」だ。

注文履歴もデータベース化

 このサービスを使うと、飲食店が電話やインターネットで受け付けた来店予約の情報を簡単に集約し、一元管理できる。「ぐるなび」など約30のグルメサイトなどとも連携しており、サイト経由の予約情報も自動で集約される。

 予約状況がタブレット端末でひと目で確認できるため、手間のかかる予約管理や配席といった事務作業を省力化でき、従業員は接客や調理、店員の指導といった基幹業務に集中できる。

 さらに、予約した顧客の来店回数や過去の注文履歴などをデータベース化できるので、新人でもそれを事前にチェックすれば、好みのワインを勧めるなど、ベテランのような接客ができる。

 飲食業界は人手不足が慢性化、限られた人材を効率的に配置し、最大限戦力化する工夫が求められている。中村仁社長(49歳)はここに鉱脈を見いだし、2013年にトレタを設立。デジタルの予約・顧客台帳サービスの市場を切り開いてきた。1店舗当たり月額1万2000円(税別)のこのサービスを導入する店は約1万7500店に上り、国内で3割を超えるトップシェアを誇る。

 中村社長の事業家精神は幼い頃から養われていた。祖父が中堅印刷会社の創業者で、2代目社長の父の背中を見て育った。「将来は人々の暮らしを変える仕事をしたい」と思うようになったのは自然な流れだった。

 ところが大学入学後間もなく、家業の印刷会社が過剰な設備投資で資金繰りが悪化し、倒産。自宅まで手放す試練に見舞われる。

 1992年に大学を卒業した中村社長が選んだ就職先はパナソニックだった。映像機器の営業企画などを担当したが、ほどなくマルチメディアブームが到来する。「ITが社会を変える」と直感した中村社長は、当時花形の「マルチメディア推進室」への異動を願い出るが、希望が通らず退社。95年に転じたのは米IBMの広告を手掛ける外資系広告代理店だった。「ITが社会を変える過程を最前列で見られる場所を選んだ」

日経ビジネス2019年6月3日号 84~85ページより目次