建築の「顔」となるファサード(建物の前面)が、建築の最先端技術が集まる部分となりつつある。脱炭素社会の実現に向けた環境配慮の高まりが、その動きを加速させた。今後デジタル技術も駆使しながら、デザインと機能の高度な掛け合わせが求められる。

2022年4月に開業したOMO7大阪 by 星野リゾート。施設の低層部には、全長約85m、高さ約5mのパブリックスペース「OMOベース」を設けている(写真=生田 将人)
2022年4月に開業したOMO7大阪 by 星野リゾート。施設の低層部には、全長約85m、高さ約5mのパブリックスペース「OMOベース」を設けている(写真=生田 将人)

 短冊状の膜を5000枚超連ね、日射を約80%反射する──。星野リゾートのホテル「OMO(おも)7大阪by 星野リゾート」(大阪市、以下OMO7大阪)が2022年4月、JR新今宮駅の目の前に開業。目を引く白いファサードは、パネルではなく「フッ素樹脂酸化チタン光触媒膜」(以下、外装膜)で覆ったことで生み出されたデザインだ。国内初の設計技術を採用して、省エネ性能の向上やヒートアイランド現象の緩和を図った。

膜材利用で温度上昇を抑制

 ホテル棟の設計を手掛けた日本設計建築設計部の松尾和生フェローは、「白くて柔らかい外装膜で構成したファサードは、かつて大阪と北海道の間を航海していた北前船の帆から着想を得た。環境性能を高めつつ、地域の歴史性をデザインすることを意識した」と説明する。現地を訪れると、松尾フェローが思い描いたように、風が吹いた際に外装膜は帆のようになびいていた。

 ホテル棟に使用した膜材の厚さは約0.8mmで、重量は1.35kg/m2。大きさが異なる184パターンの膜材5265枚を配置している。今回、OMO7大阪のファサードにあえて膜を採用したのは、「周辺地域への環境配慮」と「施設の省エネ性能の向上」を両立できる一石二鳥の素材だったからだ。

 外装膜で施設を覆うことで、日射など外からの光の約8割を反射・拡散し、熱容量の大きいコンクリート外壁への直達日射量を軽減。施設の表面温度の上昇を抑えつつ、周辺地域のヒートアイランド現象の緩和を図る。さらに外装膜がない場合と比較すると、客室内に差し込む日射量を30~45%軽減できることをシミュレーションで確認。施設内の冷房設備の作動時に必要なエネルギー消費量の削減にもつながると考えた。

 ホテル棟全体を外装膜で覆う設計技術は、日本設計と太陽工業(大阪市)、不二サッシが共同で開発し、3社が連名で特許を出願中だ。