建設業界が抱える課題をAIで解決しようともくろむベンチャー企業が増えてきた。その範囲は振動制御から平面プランの自動設計まで幅広い。注目を集める4社の取り組みを紹介する。

 2021年2月設立ながら、大手建設会社との協業で耳目を集めているのが、東京大学発ベンチャーの燈(あかり、東京・文京)だ。競争力を失いつつある大企業をAI(人工知能)で支援し、日本を照らす燈(あかり)となりたい──。そんな思いを社名に込めている。

 同社を率いるのは東大工学部精密工学科3年生の野呂侑希CEO(最高経営責任者)。入学後、すぐに休学してAIベンチャーで働き始め、人材会社を創業。復学後はAI研究者でソフトバンクグループ社外取締役も務める松尾豊教授の松尾研究室で産学連携に取り組み、コロナ禍の真っただ中に燈を設立した。

写真は燈のメンバー。中央が野呂侑希CEO。
写真は燈のメンバー。中央が野呂侑希CEO。

 会社の柱はクラウド経由でソフトを提供するSaaS(サース)事業と、DXソリューション事業の2つ。前者については、ゼネコン向けの請求書受領システムを展開する。DXソリューション事業は、22年5月に発表した大成建設との協業成果がある。

 具体的にはPDF形式で文字列として保存されていて活用しづらかった設計図書のデータを、コンピューターが集計・解析できる構造化データに半自動で変換し、BI(ビジネスインテリジェンス)ダッシュボードで簡単に比較分析ができるようにした。建具表などの表構造を読み取るアルゴリズムが強みで、3次元で設計図をつくるBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)データなども変換できる。

 野呂CEOが建設業に目を付けた理由はいくつかある。

 まず、歴史の長い企業が多いこと。社内に蓄積されてきた情報は、大量のデータの分類や解析を生業としているAI企業からすれば魅力的な資産となる。

 そして、技能者の高齢化などを背景に生産性向上が求められていること。さらには、建物やインフラの老朽化が急速に進み、手間のかかる維持・補修が大量に発生すること。「デジタルとアルゴリズムで、効率化を支援したいと考えた」(野呂CEO)

 野呂CEOは「“あかり”が小さいままだと、照らせる範囲も狭い。我々の目指すところは、日本のてっぺんだ。世界にも出ていきたい」と静かに闘志を燃やす。

設計図書を真の資産に変える
設計図書を真の資産に変える
大成建設との協業の成果。建具などの設計情報を簡単に比較・分析できる(画像=大成建設提供)
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