面倒極まりない印象が強い金融機関の口座開設が、一気に利便性を向上し始めている。スマホの普及や画像処理技術などの高度化で、煩雑な身元確認がオンライン上で完結できるようになった。カーシェアリングなどでも導入が進み、サービスを円滑に提供するためのインフラとなりつつある。

 投資に興味があるが、口座開設手続きが面倒そうだ──。「貯蓄から投資へ」が声高に叫ばれるが、そんな煩雑さを嫌気して二の足を踏む人は多い。書類をインターネット上でアップロードした上で、さらに郵送・返送まで求められるとなれば、考えただけでうんざりするのも無理はない。

 だが、実は最近このような物理的手続きが急速に消えつつある。

 南都銀行が10月3日に始めた投資信託・NISA口座開設の手続きでは、写真付き本人確認書類の撮影とその場での顔写真撮影で本人確認にからむ作業が完結する。普通預金の口座番号やマイナンバーなどの入力と合わせ、最短で翌営業日から口座を使うことが可能という。

 このシステムは、生体画像解析を手掛けるLiquid(リキッド、東京・千代田)の「LIQUID eKYC」を使っている。画像処理やOCR(光学的文字認識)の技術が高度化したことで、オンラインで済むようになってきたのだ。リキッドは大手金融機関や通信事業者など約140社と契約している。

スマホの普及と画像認識技術の向上などで、身元確認がオンライン上で簡単にできるように
スマホの普及と画像認識技術の向上などで、身元確認がオンライン上で簡単にできるように

 「KYC」とは耳慣れない言葉かもしれないが、「Know Your Customer」の略で、購入者や利用申込者の身元を確認するという意味だ。そもそもは資金洗浄(マネーロンダリング)など事業者が自社のサービスの不正利用を避けるための防衛手段として位置づけられてきた。経済活動が複雑化し、グローバル化する中で、規制も強化されてきた経緯がある。電子化したKYCを「eKYC」と呼ぶ。

非規制業種にも導入進む

 2018年に相次いだ暗号資産交換所からの資産流出も規制強化を後押しした。同年の犯罪収益移転防止法改正でKYCの電子化が定められた。これを契機に、犯収法の枠組みでKYCが義務付けられている事業者の「eKYC」導入が進んできた。

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