同社は月に1回、アプリの使い方やCBTの考え方を解説するオンラインイベントも実施している。毎回100人前後が参加し、利用者からは「毎日取り組むことで1週間の思考や感情の波を振り返れる」(40代会社員)、「落ち込んでも立ち直りが早くなった」(20代会社員)といった声が上がった。小川氏は「CBTの決定版アプリとして今後も機能を強化していく」と意気込む。

 スタートアップのUnlace(アンレース、東京・渋谷)が開発したアプリ「Unlace」は、前田康太社長自身がうつに悩まされた経験から生まれたものだ。前田社長は「自分が心の病にかかっていることを認めたくなかったが、心身の不調はどんどんひどくなった」と当時を振り返る。

自身の経験を基に開発

 復調のきっかけとなったのがカウンセリングだった。気が合い、親身に話を聞いてくれたカウンセラーに悩みや思いを打ち明けることで、心身が上向くようになった。

 「同じように苦しむ人は多いはず。どのようにアプリを設計すれば気軽に使えるだろうか」と考えた前田氏がたどり着いたのが、「ベッドの上でも使えること」だった。心身が不調だと、外に出ることすら苦痛に感じてしまうことが少なくない。その苦痛を取り払うため、チャット形式でカウンセラーとやりとりできるようにした。顔出しは不要で、利用者が相談したいタイミングに極力合わせて行えるのが大きなメリットだ。

 Unlaceでは頭に浮かんだ気持ちなどを書き留める「ジャーナリング機能」のほか、利用者のツイッター上の書き込みを人工知能(AI)で解析し、自分の心情を振り返れるようにした。有料プランは2週間で8800円、1カ月で2万2000円など期間に応じて4つ用意する。無料の心理診断は月に約1万2000人が利用。今後もアプリの機能拡張を予定するが、「気楽に簡単に使ってもらえることを第1に考えたい」と前田氏は話す。

[画像のクリックで拡大表示]

 環境変化が激しく、常にストレスにさらされる現代社会では、メンタルヘルスの問題は誰もが抱えうる。心身の不調を感じてからケアを考えているようでは、症状改善に思わぬ時間を要することもあり得る。

 日常生活の一環として、常に自分の心と体に向き合う習慣をつける。その積み重ねによって、ちょっとした体調の変化や感情の起伏に気付いたり、精神状態をコントロールしたりしやすくなる可能性がある。今回紹介したスマホアプリはその一助となってくれるだろう。

(生田 弦己)

日経ビジネス2022年9月19日号 54~56ページより目次

この記事はシリーズ「テックトレンド」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。