顔色の変化にも着目した。血液の流れにより絶えず変化している顔色を調べると、心拍数や心拍の揺らぎが分かる。心拍の揺らぎは自律神経によって調節されており、スマホのカメラでこの微細な動きを検知し、自律神経の状態を推定。こうした客観的なデータだけでなく、自分自身の顔を見てどう感じるかという主観的なデータも活用し、ストレスや疲労のたまり具合を割り出す。

 記者も実際にアプリを使ってみた。まず、自宅でくつろぐオフタイム用の「心身の解放」、仕事中のオンタイム用の「シャキッと切り替え」など4つのモードから選択。スマホに映る自分の顔を見ながら「疲れた目をしているように見えますか」、「口角が下がっているように見えますか」など5つの質問に答えた。その後、顔色の変化が読み取られた。

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 10段階評価で心や体の充実度や改善に向けたアドバイスが表示され、記者の分析結果は「心だけが疲れて不安定な状態です」だった。結果に応じて、音楽が流れたりアート画像が表示されたりする。また、自分の心拍数と同じテンポでスマホが振動。心と体を癒やす効果を狙う。

 同社が、疲労に関係するとされる体内の特定物質の含有量などをアプリ使用前後で比較したところ、日常的にアプリを使うことで疲労度の低下が確認され、睡眠の質の改善にもつながったという。同アプリは米アップルの基本ソフト「iOS」に対応し、一部有料(月額500円)だが、9月12日から来春までの期間限定ですべての機能を無料としている。

認知行動療法に着目

 心理療法の一つである「認知行動療法(CBT)」を取り入れ、利用者がストレスを感じ過ぎずに思考のバランスを取れるよう支援するアプリが、スタートアップのHakali(ハカリ、東京・新宿)が手掛ける「Awarefy(アウェアファイ)」だ。

 例えば、仕事でミスをした場合、「私は社会人失格だ」と考えるのが「認知」。その結果、現実逃避して職場から帰ってしまうのが「行動」だ。この「認知」と「行動」に直接働きかけ、過度に悲観的にならないようメンタルヘルスの改善を図ろうとするのがCBTだ。同分野を専門とする早稲田大学人間科学学術院の熊野宏昭研究室と共同研究し、その成果をアプリに生かしている。

 Awarefyの機能の一つが、日々の出来事の内容と、その時の思考や感情を書き出して整理する「感情メモ」。書いたメモは集計・分析され、感情の変化を時系列で追うことで、自分にどんな思考パターンがあるかを理解できるようになる。CBTでは「コラム法」と呼ぶ対処法で、同社の小川晋一郎CEO(最高経営責任者)は「書くことで客観的に物事を捉えやすくなり、気持ちが楽になったと実感できる人は多い」と指摘する。

 また、朝と晩に自分の心や体の状態を5点満点で記録する「チェックイン・チェックアウト」は、自分の認知や行動を客観的に捉えるCBTの「セルフモニタリング」に基づく。近年注目を集める呼吸法「マインドフルネス」を実践する音声ガイド機能もつけた。米グーグルの「アンドロイド」と「iOS」に対応し、月額利用料は680円。一部機能は無料だ。

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 7月には1日10~15分で終えられる、プログラム形式のメンタルケアメニューの提供を開始した。テーマごとに1カ月間のメニューをこなし、CBTに基づくスキルを習得できるというもので、第1弾は「うつ気分に備えるスキル」を対象としたプログラム。今後、「不安」「不眠」など需要の多いテーマに沿ったプログラムの開発を検討している。

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