新型コロナウイルス禍を受け、心の健康が悪化する「メンタルヘルス」の問題を抱える人が増えている。そうした中、肌の状態を画像解析したり、人工知能(AI)で過去の心情を推測したりするスマートフォンアプリが登場。自分の心と体に習慣として向き合い、異常を早期に発見するサービスとして利用が広がりそうだ。
出口の見えない新型コロナウイルス禍。厚生労働省が2021年11月に実施した調査では、その直近1年間でコロナ禍によって心の健康が「悪化した」と答えた人数は全体の22%に上った。その後も、メンタルヘルスの問題に苦しむ人の数は高止まりしているとの見方は多い。
メンタル関連で苦しむ人はコロナ禍前から増加傾向だった。厚労省によると、20年10月時点で気分・感情障害を抱える推定患者数(躁うつ病を含む)は約11万9000人。02年と比べて31%多い水準だ。
心の不調の場合、誰かに打ち明けようにも周囲の目が気になって尻込みし、自分一人で抱え込んでしまうケースが少なくない。そうした人の悩みを解決すると同時に、心が不調に陥らないように予防するスマホアプリが続々と登場している。
化粧品大手ポーラ・オルビスグループで研究開発を担うポーラ化成工業(横浜市)は1月、疲れやストレスを分析し、気持ちの切り替えをサポートするアプリ「me-fullness(ミーフルネス)」の配信を始めた。同社フロンティアリサーチセンターの本川智紀上級主任研究員は「街を歩いていると、鳥のさえずりが耳に入ってきたり、花の香りに気付いたりして、ほっと一息つける。そんな心の余裕を取り戻してもらいたいとの思いから開発した」と話す。
「肌分析」技術を活用
目指したのは「客観的に、しかも簡単に自分の心身の状態が分かるアプリ」(本川氏)。そこで活用したのが、同グループがコア技術として長年培ってきた肌の分析技術だ。
疲れやストレスがたまると、肌が荒れたり、吹き出物ができたりと様々な変化が起きる。「ストレスを解消して肌を良くする」というのが化粧品会社の研究開発のアプローチだったが、今回は肌の状況からストレスの状況を検知するという、従来とは逆のアプローチを取った。同社が持つ約2000人分の肌や疲労に関するデータベースを基に、肌表面の状態からストレスや疲労度を推定できる技術を生かしている。
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