リチウムイオン二次電池(LIB)のリサイクル事業などに参入する動きが相次いでいる。事業が軌道に乗れば、LIBが抱える多くの課題が大幅に改善する。処理量は2025年には22年初頭比100倍前後に増える見通しだ。
LIBは2030年には年間で150万~600万トンが当初の役割を終え、廃棄される可能性があると予測されている。しかし、LIBは廃棄自体が簡単ではない。電気が残っているLIBを放電させないまま強引に破砕すると短絡して火災になる恐れがある。一般のゴミ焼却炉で焼却もできない。電解液に含まれる六フッ化リン酸リチウムが熱分解して強い毒性がある五フッ化リンが発生するからだ。しかも五フッ化リンは水とも激しく反応して有毒なフッ化水素ガスなども生じる。今のうちに対策を進めなければ、退役LIBが急増する25~26年以降は、世界中がこの問題に直面することになる。
これらの課題を大幅に軽減する可能性がある対策が、LIBのリユースやリサイクルだ。特にリサイクルでは、LIBの製造時に投入した各種材料を再生して再度LIBの製造に使う「資源の循環」が実現し、金属元素の供給や価格の安定化に貢献。しかも、やっかいなゴミだった退役LIBが、都市鉱山の有望な“鉱石”へと変貌するのである。EVの市場が飽和してきた後には金属元素の新規の採掘量を大幅に減らせる可能性もある。
LIBの循環経路に3つの“R”
LIBの資源循環を詳細にみると、その循環経路は大きく3つの“R”に分けられる。①車載用電池パックをそのまま定置型蓄電池などの別の用途に使うリパーパス(Repurpose)②電池パックを分解してセルを選別し、それを再度電池パックに使うリユース(Reuse)③電池を材料にまで分解し、新規の電池製造に利用するリサイクル(Recycle)──だ。
このうちリパーパスは、比較的新しいLIBの使い方である。電池パックの分解などをしないため追加コストが非常に低いという利点がある一方、これまで性能が劣化した電池セルを含む電池パックをそのまま使うのは、定置型蓄電池といえども合理的でないと考えられていたからだ。ただ、最近は電池の制御を工夫することで、リパーパスも“禁忌”の使い方ではなくなってきた。
リパーパス事業の展開に積極的なのが伊藤忠商事や丸紅といった日本の商社だ。
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