車載用など蓄電池のサプライチェーンで、二酸化炭素(CO2)排出量低減の“鉱脈”が相次ぎ見つかっている。材料のリチウムを鉱石から取り出す際の熱エネルギーの効率化や、レアメタルそのものの使用量を減らす技術だ。欧州を筆頭とする規制に対応した動きで、電池の材料開発で世界をリードする日本勢の腕の見せどころになっている。

(1)量研機構六ヶ所研究所にあるマイクロ波化学の加熱装置(2)オーストラリアなどから産出されるリチウム鉱石(3)精製後の炭酸リチウム粉末
(1)量研機構六ヶ所研究所にあるマイクロ波化学の加熱装置(2)オーストラリアなどから産出されるリチウム鉱石(3)精製後の炭酸リチウム粉末

 欧州連合(EU)の欧州委員会は2020年12月、電池に関する規則の改正案を発表した。24年7月以降、車載電池や産業用蓄電池を対象に、第三者の検証機関が証明した製造から廃棄までの各段階でのカーボンフットプリント(二酸化炭素総排出量)の申告が義務付けられる。27年からはカーボンフットプリントの上限値も導入される見通しだ。

 日本でも欧州の規制強化を受けて、22年1月から経済産業省が「蓄電池のサステナビリティに関する研究会」を開催。7月に発表された中間の取りまとめでは、カーボンフットプリントの算出方法や、具体的なルール作りを進める方針が示された。

電子レンジの技術

 日本勢は正極材など電池材料で高い世界シェアを占めるが、今後は車載用などで電池メーカーからの要求に従い、製造時のCO2削減という課題を背負うことになる。

 規制強化が取り沙汰される中、7月13日に驚きのニュースが発表された。マイクロ波化学と量子科学技術研究開発機構(千葉市)が、マイクロ波でリチウム鉱石を溶かすことに成功したというのだ。

 マイクロ波化学は6月に東証グロース市場に上場したディープテック企業。電子レンジにも使われるマイクロ波を用いた化学品製造というユニークな技術を持つ。

 通常、リチウムを鉱石から抽出するには加熱して溶かすが、膨大な燃料を必要とする。まず約1000度で鉱石を熱して溶かしやすくした後、濃硫酸という化学品を入れて約250度で加熱して溶解。その後不純物などを取り除いて精製するというプロセスだ。

 熱源は化石燃料を燃やして作る。熱源から鉱石に熱が伝わる際、どうしても無駄なエネルギーが生じてしまう。だが、マイクロ波を用いれば従来と比較して低温での抽出ができる。なぜか。

 電磁波の一種で電子レンジにも使われるマイクロ波の最大の特徴は、特定の物質に対して、分子レベルでエネルギーを直接、ピンポイントで伝えられること。つまりエネルギー効率が極めて高い。マイクロ波はあてると加熱させる対象自体を発熱させるため、無駄なく加熱できるのだ。

 マイクロ波化学の製造プロセスは鉱石とアルカリ性の試薬粉末を混ぜ、マイクロ波で約300度に加熱。酸溶液に入れて常温で抽出する。その後は従来のプロセス同様、不純物などを取り除いて精製すれば、リチウムの粉末が出来上がる。

 また、マイクロ波を出すときのエネルギーは電気。このため再生可能エネルギーも選択肢に入り、従来型の化石燃料と決別できる可能性がある。

マイクロ波を使えば化石燃料は不要に
●リチウム抽出の過程の比較
マイクロ波を使えば化石燃料は不要に
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