新たな建築生産方式として注目される建設3Dプリンター。海外に後れを取ってきたが、国内でも小規模な倉庫など一部で導入が始まった。大手企業とスタートアップの協業も行われている。

セメント系の3Dプリンターで倉庫の壁を12分割して印刷し、群馬県渋川市内の現場に輸送して組み立てた
セメント系の3Dプリンターで倉庫の壁を12分割して印刷し、群馬県渋川市内の現場に輸送して組み立てた

 群馬県渋川市内で、建設用の3Dプリンターを用いて建築物を「印刷」するプロジェクトが実現した。建物の規模は幅約6m、奥行き約3~4m、高さ約3m。延べ面積約18m2の平屋で、用途は倉庫だ。構造種別は鉄骨造。6本の柱で屋根を支える。

 壁全体を3Dプリンターで印刷した。建築確認は同市に申請し、2022年1月24日付で確認済み証の交付を受けた。印刷した壁を構造体として使用するわけではないものの、3Dプリンターでの造形を前提に確認済み証の交付を受けた建物は国内初とみられる。設計・施工はMAT一級建築士事務所(群馬県東吾妻町、以下MAT)が担当した。

 使うのはセメント系3Dプリンターで、ノズルを移動させながらモルタルを連続的に吐出して積層し、構造物を造形する。曲面や空洞など複雑な形状を型枠を用いずに造形可能で、工期短縮などの効果も見込める。

 開発したのは、19年に創業したばかりのスタートアップ企業、ポリウス(東京・港)だ。同社の岩本卓也代表取締役CEO(最高経営責任者)は「建設3Dプリンターを普及させるうえで、確認申請を通すことは非常に大事なプロセスだった」と強調する。

神奈川県鎌倉市内にあるポリウスの拠点で、壁の部材を印刷する様子。
神奈川県鎌倉市内にあるポリウスの拠点で、壁の部材を印刷する様子。
表面の積層痕が特徴で、1層の厚さは1cm程度
表面の積層痕が特徴で、1層の厚さは1cm程度

 造形から現地施工までの手順はこうだ。まず、神奈川県鎌倉市内にあるポリウスの拠点で、12ピースに分割した部材を印刷する。1ピース当たりの高さは150cmで、印刷時間は4~6時間。全部材の印刷には10日ほど要する。並行して、現場では基礎を約2週間で施工する。印刷した部材は渋川市内の現場までトラックで輸送し、3日程度で組み立てる。その後、屋根や開口部、内装などを施工すれば完成だ。

完成した倉庫。曲面の施工が得意な建設3Dプリンターの特徴を生かせるようにデザインした(写真=ポリウス提供)
完成した倉庫。曲面の施工が得意な建設3Dプリンターの特徴を生かせるようにデザインした(写真=ポリウス提供)

 ポリウスなどの試算によると、同じ建物を従来の工法で施工した場合、基礎や躯体(くたい)の工事、仕上げ工事に計43日かかる。このうち躯体の施工には18日を要する。一方、今回のプロジェクトでは躯体の施工が3日ほどで終わるため、工期は約35%減の計28日で済む。今回の建物を販売するなら価格は約600万円。従来の工法だと750万円ほどになるという。ポリウスの岩本CEOは「材料費が下がれば、さらに原価を下げられる」という。

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