自動運転に欠かせない3次元地図の世界で技術革新が進んでいる。レーザースキャナーなどで空間を計測し、リアルに近い立体的な地図を作り出す。人手やコストが課題とされるなか、開発の自動化や用途の拡大が鍵となる。

 2021年1月、長野県塩尻市の公道で1台の無人のタクシーがゆっくりと走行していた。ハンドル近くに設置されたモニターには、周囲の状況を3次元で示した地図上に走行ルートが赤く映し出されている。自動運転「レベル2」に相当する実証実験に取り組んでいたのは、自動運転システム開発のスタートアップ、ティアフォー(名古屋市)や損害保険ジャパン、測量システムを手掛けるアイサンテクノロジーだ。

 なぜ測量会社が自動運転技術の開発に携わっているのか。その理由は、モニターに映された「地図」にある。

 自動運転車が道路上を安全に走行するために欠かせないのが、「高精度3次元地図(HDマップ)」と呼ばれる技術だ。建物の高さや車線幅、道路上の信号の正確な位置など実際の空間を反映した立体的な地図で、車が周囲の状況を判別したり、自車の位置を認識したりする手掛かりとなる。ティアフォーとアイサンテクノロジーなどが開発する自動運転技術にも組み込まれている。

 HDマップは、レーザースキャナーやカメラによって空間を計測、膨大な点群データを基に地図を生成する。そのため、高度な測量技術やデータを扱うノウハウが必要になる。

誤差はタイヤ1本分

従来の地図とは作製手法が異なる
従来の地図とは作製手法が異なる
●デジタル地図の主な特徴
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アイサンテクノロジーなどが行った実証実験の自動運転車両内部。モニターにはHDマップが映る
アイサンテクノロジーなどが行った実証実験の自動運転車両内部。モニターにはHDマップが映る

 測量や土木向けのシステムを祖業とするアイサンテクノロジーは、09年にHDマップの作製を手掛けたことをきっかけに自動運転開発の領域に参入した。モビリティ事業本部の大石淳也部長は「測量用の技術がデジタル地図データへのニーズの高まりにうまくマッチした」と話す。

 これまでもスマートフォンの地図アプリやカーナビゲーションシステムなど、日常のあらゆる場面で地図のデジタルデータは活用されてきた。だが、自動運転技術の開発競争が過熱するなかで地図の高精度化が求められており、その姿は様変わりしている。

 従来の2次元地図は、航空写真や自治体が持つ都市計画図といった平面の情報を基に作られてきた。カーナビを例にとると、使用されているデジタル地図の縮尺は2500分の1程度。車両の測位には全地球測位システム(GPS)を使用していることがほとんどで、測位精度は数mレベルでの誤差が一般的だ。