大型マイクロLEDディスプレーとゲームエンジンの活用で、映像制作が大きく変わろうとしている。「バーチャルプロダクション」は、クリエーターを時間と場所の制約から解放する。架空の世界とも一体になれる、リアルとバーチャルの融合への可能性も秘めている。

 映画やCM撮影の常識を覆す新たな撮影スタイルが急速に浸透し始めた。「バーチャルプロダクション」という新たな映像制作手法だ。

 仮想空間を活用したリアルタイム映像制作手法の総称で、広義ではグリーンバックを用いた「クロマキー合成」や、VR(仮想現実)空間内での映像撮影なども含む。中でも最近注目されるのが、LEDウオール(大型のLEDディスプレー)と「インカメラVFX(ビジュアルエフェクツ)」を用いたバーチャルプロダクション。この手法では、あらかじめ作成した背景のCG映像をLEDウオールに表示し、その前で役者らが演技をして撮影する。いわば、バーチャルなCG(コンピューターグラフィックス)とリアルを融合させる技術だ。

リアル×CGで自然な映像表現を様々な背景シーンで実現
リアル×CGで自然な映像表現を様々な背景シーンで実現
LEDウオールを用いたバーチャルプロダクションは、表示した背景映像とリアルの撮影対象物が組み合わさることで、様々な背景シーンでも自然な映像表現を可能とする(a、b)。以前から使われてきたグリーンバックによるクロマキー合成と比較すると、現状ではまだ設備や撮影コストが高く、事前に背景CGを作成する手間がかかるものの、映像表現の質が高かったり、撮影時に完成イメージが分かりやすかったりなど、利点が多い
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 バーチャルプロダクションの利点は、役者や制作関係者などを時間と場所の制約から解放することだ。例えば映画やCMの舞台となる場所に実際に行かなくても、LEDウオールに表示した映像を切り替えればどの場所でも撮影できるようになる。さらに背景はCGなので、例えば朝焼けや夕焼けといった撮影時間が限られるシチュエーションでも、何度でも繰り返して撮影できる。

 撮影後の映像処理の工程にも、大きな利点がある。従来の「クロマキー合成」(背景をすべてグリーンなどの単色にした映像を撮影し、被写体を切り抜いてCG映像と合成し、ソフトウエア処理で調整する手法)に対する優位性は、実際の撮影対象の反射や映り込み、透過表現などを容易に再現できることだ。

 例えば、透明なペットボトル越しの背景などである。クロマキー合成でこうした表現をしようとすると、後工程で非常に多くの処理が必要になってしまう。しかしバーチャルプロダクションなら、投映された背景映像が透過した映像をそのまま利用できる。

 ソニーPCLとアパレルのCM撮影を手掛けたアイレップ プランニング&クリエイティブUnitエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターである平知己氏は、CM映像制作の期間やコストを大幅に削減できることの重要性を強調する。

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