介護の現場にもデジタルトランスフォーメーション(DX)の波が押し寄せている。高齢者の体調など様々なデータを集約し、人員配置の適正化や介護の「質」の向上につなげる狙いだ。センサー機能を持つベッドなど、データの取得・解析のための新たな機器やツールの開発も進んでいる。

「Aさん、トイレに行く時間帯が前と違いますね。回数も増えているようですし」「では明日からスケジュールを調整しましょう」──。
SOMPOホールディングス傘下で介護を手掛けるSOMPOケア(東京・品川)の施設で働く従業員の間で、最近よく交わされるようになったやり取りだ。入居者の体調に合わせて、日々の介護計画や人員配置を修正し適正化していく。
何の変哲もない作業に思えるかもしれないが、実はこれは大きな変化なのだという。以前であれば「見直しに3~4日はかかっていた」(SOMPOケアそんぽの家 はるひ野の古澤隆ホーム長)。
なぜか。従来の介護施設運営は、基本的に全て紙ベースの情報管理が一般的だった。着替えやトイレ、食事、入浴、運動といった介護を何時に誰が担当したか、入居者1人について1日分をA4サイズの用紙1枚にまとめて記録するやり方だ。これだとトイレの時間や回数などの細かい変化は、紙をめくって確認すれば不可能ではないが、手間がかかり毎日はできない。
介護を担う担当者は同一人物が24時間稼働できるわけではなく、シフトを組んで業務を行う。引き継ぎや申し送りをきめ細かくフォローする余裕も乏しくなりがちだ。「1日当たり1~2回のわずかな変化の場合、従業員としても言い出しにくい。入居者ご本人に意見を聞くにも限界がある」(古澤氏)
離職率の低下にも効果
SOMPOケアでは、これをデータ化で解決しつつある。あらかじめ定めた介護計画や業務フローを電子化し、従業員に貸与されたスマートフォンのアプリ上でアクセスできるようにした。介助が終わるたびに従業員はスマホを操作し、数タップで「済」を入力。もともとの計画にない臨機応変な対応も書き込める。
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