カーボンニュートラル(温暖化ガスの排出量実質ゼロ)対策がさまざまな産業で進んでいる。材料分野では、バイオマス化による化石資源の使用量削減の取り組みが目立ち始めた。日本が得意とする多様で個性的な材料技術が脱炭素を推進する。
カーボンニュートラル時代に入り、化石資源由来のプラスチックに対する風当たりが強くなった。半面、世間から好印象を受けるようになったのが、植物をはじめ再生可能な生物由来の有機性資源(バイオマス)を原料とするバイオプラスチックだ。
PLAで世界をリード
その中でも、成型技術で日本が世界の先端を走っているのが、ポリ乳酸(PLA)だ。原料にトウモロコシや芋、サトウキビなどを使用。それらから得られるブドウ糖に乳酸菌を混合させて乳酸を生成。それを化学重合で合成することで得られる熱可塑性プラスチックだ。
加えて、PLAは使用後は土壌中などの微生物によって水と二酸化炭素(CO2)に分解するという性質も持つ。つまり、自然から生まれて再び自然に返る「植物由来・生分解性プラスチック」である点が、「グリーン材料」としてPLAに好印象をもたらしている。
PLAの成型技術で日本は世界をリードしている。その代表格が、小松技術士事務所所長の小松道男氏が開発した「CO2超臨界成型」だ。溶融したPLAに、超臨界状態(液体と気体の性質を併せ持つ状態)のCO2を瞬時に溶解させて金型に射出する生産システムだ。「この生産システムは、射出成型機や金型の技術、金型に樹脂を流し込むホットランナーなどの技術を組み合わせて成り立つ。総合力がものをいう生産システムの開発により、PLAの成型技術は日本が世界で最も進んでいるといえる」と小松氏は胸を張る。
伝統技術と融合
CO2超臨界成型を活用した製品が、日本で続々と生まれている。その一つが、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催された「2020年ドバイ国際博覧会」で展示の「紫翠盃(しすいはい)」だ。

開発したのは、食器の開発から生産、販売までを手掛ける三義(さんよし)漆器店(福島県会津若松市)。「日本を代表する製品として同万博日本館VIPへの記念品に採用された」(同社社長の曽根佳弘氏)ほどの出来だ。
紫翠盃は、最先端の環境技術に同社が持つ伝統工芸を融合させた製品。PLAを射出成型して造った透明の杯の表面に430年の伝統を持つ会津塗を施す。すなわち、PLAの成型品に、天然の樹脂塗料である漆を塗って絵柄を付け商品性を高める。
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