「持続的」なスマートシティーを模索する動きが活発化している。重要な要素を担うのが日常生活から発生する「住民データ」だ。住民と企業が共存共栄できるスマートシティーの在り方を探る。

「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン (Fujisawa SST)」
「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン (Fujisawa SST)」
1961年にパナソニック(当時・松下電器産業)が藤沢工場を設置。テレビや冷蔵庫などの家電製品を製造する主力工場としての役割を果たした。創業者の松下幸之助氏が60年代に発生した都市化の社会課題(人口集中など)を解決する一環として地方に工場を建設し、雇用の創出、人口の分散などの地方活性化を狙ったという。その後、工場跡地を利用して街の開発が進んだ(写真=パナソニック提供)

 パナソニックが神奈川県藤沢市で手掛けるのが「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)」だ。パナソニックの藤沢工場の跡地を利用して2014年に誕生。挑んでいるのが、住民のデータを活用した新製品・新サービス開発だ。

睡眠に応じて家電を制御

 Fujisawa SSTがある「藤沢SST前」のバス停を降りると、歩道に隣接するように太陽光パネルが整然と並ぶ様子が目に入る。

 目の前に広がる住宅街は、すでに街びらきから時間が経過しているものの、いまだに新興住宅街の雰囲気が残っている。少し歩いた先にある街中の商業施設「湘南T-SITE」内には多くの家族連れが訪れており、背丈の小さな子どもが売り物の絵本を興味深そうにのぞき込んでいた。店内から外を見渡すと家庭用燃料電池「エネファーム」を設置した住居が並び、設備の筐体(きょうたい)に「Panasonic」のロゴが躍る。企業と住民がともに歩む街の一端が垣間見えてきた。

 Fujisawa SSTのスマートシティーとしての最大の特徴は、街全体がパナソニックの新製品・新サービスを生み出すゆりかごになっている点である。具体的にはスマートシティーの住民から協力者(モニター)を募集し、新製品・新サービスに役立てているのだ。

 そんな新サービスの一つが20年3月に事業化した、睡眠状態を可視化すると同時に利用者の状態に応じて家電を制御するアプリケーション「Your Sleep」だ。

 Fujisawa SSTの住民30世帯と協力して自宅にエアコンを設置。家電の稼働状況、睡眠時間や中途覚醒回数などの睡眠状態、部屋の温度といったデータを収集した。これらのデータをサービスの評価に利用する。「実験室のデータだと偏りが出てくるケースがある。例えば当社社員が実験に参加すると、バイアスがかかってデータの信ぴょう性が悪くなる。第三者の生活でのデータを取得できる意義は大きい」とパナソニックビジネスソリューション本部CRE事業推進部SST推進総括の荒川剛氏は強調する。