自然災害時、避難・救援活動は容易ではなく、新型コロナウイルスなど感染症流行時はなおさらだ。そんな中で進むのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)の活用。被災現場の情報を効率的に集め、双方向の意思疎通に生かそうとの動きが広がっている。
「河川が氾濫しそうです」「倒木が発生しています」。自治体職員が眺める対話アプリ「LINE」の画面に、住民からメッセージや写真が届く。官民連携で開発・社会実装を進める防災チャットボット「SOCDA(ソクダ)」だ。
災害が発生した際にLINEを介して住民が被害状況を報告したり、国や自治体が住民に必要な情報を伝達したりするのに使われる。内閣府が進める国家プロジェクトの一環で、防災科学技術研究所が全体を統括。情報通信研究機構のAI(人工知能)言語解析技術などを生かしつつ、研究開発や社会実装をウェザーニューズが担う。
ピンポイントで避難指示
SOCDA開発の目的は、災害発生時に国や自治体が迅速に情報を吸い上げ、円滑に避難指示や救援活動などを意思決定できるようにすることだ。自治体が現場に赴いて被害状況を確認し、電話や無線で災害対策本部などに報告。その上で必要な施策を検討し、国に状況を伝える、という従来の一般的な流れでは、スピーディーな対応が取りにくい。現場にいる住民から情報が集まれば、自治体は対応の検討や救援・救助活動に専念しやすくなる。
機能面の大きな特徴が、「ある住民が本当に危険な状況にある場合に、自治体側はピンポイントに情報を出せる」(ウェザーニューズ防災チャットボットプロジェクトの上谷珠視氏)点だ。自分とは関係が薄い地域での被害状況など、通知が多すぎるとブロックや無視につながり、いざというときの有用性が低下する。
ユーザーの位置情報を緯度・経度で設定できるようにし、所在地に応じて的確な情報発信がしやすい仕組みを整えた。避難行動の支援機能や、複数地域のグループLINEを集約・連携する機能なども加えている。
住民からの投稿という点で気になるのは情報の信ぴょう性。災害時にはSNS(交流サイト)上で拡散されるデマも度々問題になる。SOCDAでは電話番号にひも付くLINEを使っており、偽名で嘘の情報を流す動機付けは一定程度抑えられる。
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