新型コロナの感染対策による入場制限などの環境変化が、スポーツ施設に変貌を迫っている。もはや「競技頼み」といった常識は通用しなくなってきた。北海道と青森の2つの注目プロジェクトから、持続可能の条件を考える。
新千歳空港からJR千歳線で約20分。進行方向左手の車窓に、北海道ボールパークFビレッジの巨大な建設現場が見えてくる。スタジアムの概念を変え得る総工費600億円のビッグプロジェクト。開業は2023年3月の予定で、北海道日本ハムファイターズの本拠地となる。

球場の概念覆す
近年、米国では野球場を「スタジアム」ではなく「ボールパーク」と呼んでいる。敷地内に飲食や宿泊、レジャー施設などを併設し、遊べる公園のような複合施設を指す。その名を冠している通り、Fビレッジは従来の野球場の概念を覆す仕掛けに富んでいる。
「野球を見に来る施設ではなく、野球“も”楽しめる施設にしたい」。事業者である北海道日本ハムファイターズの前沢賢取締役は、目指す姿をこう表現する。
野球観戦だけの短期滞在ではなく、数日間滞在できるよう挑戦的な施設を多数企画している。
約32ヘクタールという広大な敷地の中心は延べ面積約12万m2の新球技場「ESCON FIELD(エスコンフィールド)HOKKAIDO」。設計はコンペで選ばれた大林組と米HKSのチームが担当した。
多様な観戦環境を用意するのが特徴だ。3万席の観客席は、3分の1程度をフィールドに近いコンコースレベルに設置し、最前列席は国内球場で最多となる。
温泉で「ながら観戦」
球場内の4階建て施設に温浴施設やホテルを設け、「ながら観戦」が可能。既に敷地内で温泉が湧き出したことが分かっている。バックネット裏には観戦可能な個室やラウンジスペースを複数設ける。
見どころは球場だけではない。敷地内には沢エリアやキッズエリアなども配置。沢エリアではバーベキューなどを楽しめる施設を構想している。キッズエリアには子どもが遊べるミニチュアの野球場をつくり、農園エリアにはクボタなどの最先端技術を使った農業学習施設を計画している。
球場の命名権を取得した日本エスコンがマンションを建設する。新球場の開業に合わせ、23年3月に完成する予定だ。同社は球場の現在の最寄り駅であるJR北広島駅の再開発にも参画している。
球場単体でも、エスコンフィールドは常識を覆す工夫であふれている。最大の特徴は切り妻の可動屋根だ。130mの距離をレールで移動。約25分で開閉の切り替えができる。
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