地方銀行にとって重荷になっているのが勘定系システムだ。大半の地銀が参加するシステム共同化はコストが高止まりしている。反転攻勢に向け、一部の地銀は勘定系システムの変革に着手した。

 「勘定系システムに戦略的な位置付けを持たせてはいけない。勘定系を記帳機能に特化させていけば、極端な話、(全国地方銀行協会に加盟する)地銀62行で勘定系は1つという形も将来的に十分あり得るのではないか」。地銀でトップの預金量を誇る横浜銀行の大矢恭好頭取は地銀システムの未来をこう見据える。

 勘定系システムの機能を絞り込み、今より多くの地銀で共同利用することで、各行が負担する勘定系の運営コストを一段と減らす──。大胆な将来像に向け、横浜銀行が一歩踏み出した。それが横浜銀行を中心に、北陸銀行や北海道銀行、七十七銀行、東日本銀行の全5行が参画する共同利用システム「MEJAR」のオープン化だ。5行とNTTデータは2024年1月、同社製勘定系パッケージ「BeSTA」の動作プラットフォームを富士通のメインフレームからLinux基盤に移行する予定だ。

横浜銀行など5行は勘定系システムをオープン基盤に移行
●MEJARの新旧システムの比較
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出所: 取材やNTTデータの資料を基に作成
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コスト削減圧力が増加

 横浜銀行の一手は、地銀を取り巻く苦境の裏返しでもある。低金利の長期化や地方経済の衰退を背景に、顧客から集めた預金を貸し出しや市場運用に回す従来型のビジネスモデルは今や限界にきている。コスト削減の対象として、地銀平均で年50億円弱のコストがかかる勘定系を中心にしたシステムに焦点が当たっている。特に地銀の大半が参画する「システム共同化」に対するコスト削減圧力が増している。

 その方向性を決定付けたのが、金融庁が20年から公表を始めた「金融機関のITガバナンス等に関する調査結果レポート」だ。ITコストの効率性を測る指標として「(年間の)システム経費/預金量」を使い、地銀と信用金庫を比較したところ、地銀は0.17%、信金が0.11%で、地銀が信金に劣ることをデータで示した。