工場の自動搬送車(AGV)が進化している。企業や工場の状況・課題に応じた柔軟な運用を実現しやすくなってきた。生産増が続く「ガンプラ」工場などの事例を紹介する。

 コロナ禍で人材確保や人の移動が難しくなり、工場のさまざまな問題があらためて浮き彫りとなってきている。一方で、ITや機械・ロボット技術の進歩・普及も相まって、コロナ禍という試練を機に、工場が抱える課題に対するさまざまな手立ても見えてきた。

広がる自動搬送

 その一つが搬送作業の自動化。搬送は製品の価値を生むわけではなく、人ができるだけ関わらないようにしたい作業の代表例だ。従来の自動搬送車(AGV)は床に貼った誘導用磁気テープに沿って巡回するだけの硬直的な運用がほとんどだった。しかし近年は、障害物などを回避しながら自律走行できる自動搬送ロボット(AMR)の活用が広がるなど、企業や工場のそれぞれの状況・課題に応じた柔軟な運用を実現しやすくなっており、適用可能な場面も増えた。

 プラモデルを生産するBANDAI SPIRITS(東京・港)は2020年12月、「ガンプラ」(「ガンダムシリーズ」のプラモデル)をはじめとしたプラモデルを生産する工場「バンダイホビーセンター」(静岡市)の敷地内に新設した「バンダイホビーセンター新館(以下、新館)」を稼働。これによって、ガンプラの需要増に対応するため、生産能力を1.4倍に引き上げた。

進化する工場
<span class="textColNavy fontSizeL">進化する工場</span>
新型コロナで人手不足などが進み工場は改革を加速させている。中でも、省人化効果の大きな搬送の自動化や、現場作業者を情報武装するための見える化といった取り組みが広がっている
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バンダイホビーセンターの社屋
<span class="textColNavy fontSizeL">バンダイホビーセンターの社屋</span>
これまでの建屋(右)の前に平屋の新館(左)を建設した。新工場稼働を機に従来の建屋は「本館」と呼称(写真=BANDAI SPIRITS提供)

 ガンプラ生産能力の増強の背景にはプラモデルメーカー全体の活況がある。中でもBANDAI SPIRITSは好調で、06年度の年間出荷数が722万個だったのが19年度には3126万個と4.3倍に増加。そこに新型コロナウイルス感染症の「巣ごもり需要」が追い風になっているようだ。

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