家電量販店など小売事業者を中心に、柔軟に表示内容を変えられる電子棚札を活用する動きが広がっている。普及の背景にあるのは、消費者には少し地味に見えるかもしれない技術革新。活用方法の提案合戦が、電子棚札システムの提供事業者の間で繰り広げられている。

 この1~2年で、家電量販店の店頭の様子ががらりと変わったのはご存じだろうか。

 かつては「特価」「おすすめ商品」などの言葉とともに家電の型番や商品名、価格などが書かれた派手なポップが至る所に掲げられていたが、今は違う。価格を示すのは紙ではなく、電子ペーパーを使った電子棚札だ。

<span class="fontBold">欧州のスーパーでは電子棚札を見かける機会が多い</span>(写真=ユニフォトプレス)
欧州のスーパーでは電子棚札を見かける機会が多い(写真=ユニフォトプレス)

 電子棚札は無線通信を通じ商品の価格や情報、在庫状況などをリアルタイムで表示する。日本でまず大規模導入が進んだのが家電量販店だ。ノジマが2019年に全店への配備を済ませたのに続き、ビックカメラも20年、それまで段階的に導入していた電子棚札を一気に全店舗へ拡大。ヤマダホールディングス傘下のヤマダデンキも導入を一気に進めた。

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 メリットは様々あるが、第一に挙げられるのは店舗スタッフの労働負荷の削減だ。家電量販店の場合、競合店の動向を見ながら頻繁に価格を調整したり、最近ではEC(電子商取引)サイトの価格と店頭価格を連動させたりするケースが多い。

 そのたびに値札を貼り替えずとも、電子棚札とPOS(販売時点情報管理)システムなどを連携させれば、常に最新の価格を店頭で示せる。

 需給に応じて値付けを変える「ダイナミックプライシング」の本格運用なども視野に入れる家電量販店と電子棚札の相性は良かった。導入店舗では、値札の貼り替えに割いていた時間が浮いた分、手厚く接客、商品提案ができるようになったとの声も聞かれる。

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