この記事は日経ビジネス電子版に『ファミマが目指す「店舗のメディア化」』(10月20日)として配信した記事を再編集して雑誌『日経ビジネス』11月8日号に掲載するものです。

新型コロナウイルスの感染が落ち着きを見せるなか、サイネージ広告への注目が高まっている。外出自粛中に広まったネット広告のように、実世界でも広告効果を明瞭にする需要が高まっているためだ。単に看板を電子化するのではなく、データを活用した新たな広告メディアとして収益化を図ろうとしている。

<span class="fontBold">ファミマはFC加盟店にサイネージ設置料を払い、収益を還元する</span>
ファミマはFC加盟店にサイネージ設置料を払い、収益を還元する

 東京都港区にある「ファミマ!!青山ビル店」には、レジ上部に大型モニター3枚が掲げられている。売れ筋商品やキャッシュレス決済「ファミペイ」などの広告だけでなく、テレビドラマなどの娯楽情報や天気予報、ニュースを放映している。

 ファミリーマートの親会社、伊藤忠商事第8カンパニーの中元寛ゼネラルマネジャーは、「広告だけ流していると『必要が無い情報』という印象を来店客に与えてしまう」と語る。伊藤忠とファミリーマートが目指すのは、単なる看板の電子化ではなく、「店舗のメディア化」だ。

 両社は2021年9月、新会社ゲート・ワンを設立。NTTドコモやサイバーエージェントと設立したデジタル広告配信を担うデータ・ワンと連携し、店舗のデジタルサイネージ(電子看板)を活用した広告メディア事業を本格展開する。サイネージの設置店を来年春までに3000店舗に広げる計画だ。

 コンビニがメディアを目指す背景には、業界が直面する「成長の踊り場」がある。新規出店で成長してきたモデルは行き詰まり、オーナーの高齢化や24時間営業の限界など様々な課題が山積する中で、どう収益を伸ばすのか。参考にしたのが米ウォルマートだった。

小売りはメディアに向いている

 ウォルマートは、米アマゾン・ドット・コムに対抗する手立ての一つとして、「1週間に1.5億人が訪れる約4700店舗」を広告プラットフォームにすると宣言し、サイネージを設置している。ファミリーマートの国内約1万6600店舗も同じように生かせるのではないかと考えた。

 伊藤忠とファミリーマートは約1年前に100店舗で実証実験を始めた。1万5000人を対象にしたアンケートや、サイネージに設置した人工知能(AI)カメラのデータを分析すると、イートインスペースに置いたタブレットや、棚に設置した中型モニターの視認率は5~10%ほどにとどまったが、来店客が必ず立ち寄るレジ上は平均約50%と高かった。

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