かつての名製品を動かし続けられるようメーカーなどのレストア(復元)サービスなどが盛んだ。製品に強い愛着を持つユーザーは、他には代えられない価値を製品に感じている。どう応えているかを2社の事例から探る。

 マツダが、かつての名車の復活に力を入れている。サービス事業「CLASSIC MAZDA」によって、現存する「NAロードスター(初代ロードスター)」を新車だった時と同様の品質によみがえらせる「NAロードスターレストアサービス」などを手掛ける。マツダにとってはユーザーとのつながりを大事にすると同時に「新車販売だけに頼らない事業モデルを目指した戦略的な取り組み」(商品本部ロードスターアンバサダーの山本修弘氏=元ロードスター主査)である。

「CLASSIC MAZDA」でレストアしたNAロードスター
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(写真=マツダ提供)

新車並みの価格でも順番待ち

 NAロードスターの販売期間は1989~98年だが、現在もなお多くのユーザー(オーナー)が乗り続けている。レストアサービスの価格は254万7000円(税込み、以下同)から約500万円まで。新車購入価格並みの費用だが、多くの希望者が順番を待っている状況だ。

 同サービスでは、ユーザーから預かったNAロードスターを3カ月以上かけてレストア。現在の技術や設備で合理的に提供でき、事業として成立する方法を数年間模索した。受け入れ検査の後で分解洗浄し、エンジンはレストアと調整を施し、車体は修正・塗装し直し再び組み立てる。

NAロードスターレストアサービスの工程
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分解洗浄し、エンジンはレストアと調整を施し、車体は修正・塗装し直して、再び組み立てる(写真=マツダ提供)
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 その過程で交換すべき部品をどう確保するかがこのサービス事業の考えどころだ。当時の純正部品は現時点では手に入らない場合が多い。だが、純正部品と寸分たがわず同じ形の部品を造ったとしても、性能や機能面での品質をユーザーが満足してくれなければ意味はない。例えば、NAロードスターの幌(ほろ)は全体を開閉できるのに加えて、ファスナーによって一部だけを開けられる特徴的なもの。「見た目の色やツヤも大事だが、構造を再現した上で耐久性を確保しなければならない」(山本氏)。ところが、新車販売当時と同じものは入手できないとサービス開始前に分かっていた。

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