3Dプリンターをはじめとするデジタル技術が、コンクリートのこれまでの「限界」を打ち破りつつある。製造過程で排出する二酸化炭素をコンクリートに固定してカーボンマイナスを目指す研究も活発だ。次代を開く新素材開発で「超進化」を遂げるコンクリートの最前線をリポートする。
ドイツ南部のヴァイセンホルンに本社を置き、日本を含めて世界60カ国以上に支社を構える建設会社ペリーは、建設用3Dプリンター技術の開発に積極的に取り組んでいる。2015年ごろから技術開発を進めてきた同社は20年、ドイツ西部に位置する都市ベックムで、同国初となる3Dプリンターを活用した住宅建設に着手したと発表した。

工期短縮、省人化に効果
同社が建設する住宅は2階建てで、延べ面積約160m2。3Dプリンターが吐出する厚さ2cm、幅5cmのコンクリートの層を、高さ約6.5mまで幾重にも積み重ねる。目を見張るのはその施工スピード。同社の3Dプリンターは、建物の骨組みを作る躯体工事を8日で完成させた。


施工現場に常駐した作業員は3Dプリンターの動作を確認する2人のみ。建設費は同規模の住宅を従来工法で建設する場合と同程度だった。
プロジェクトの責任者を務めるペリーのファビアン・マイヤー・ブロエッツ氏は、「初の試みだったにもかかわらず工期短縮、省人化の効果を確認できた。実績を重ねれば、施工期間はもっと短縮できる」と自信を見せる。
ペリーは、デンマークの建設用3Dプリンターメーカー、コボドと3Dプリンター「BOD2」を開発した。工場でプリントした部材を建設現場に運んで組み立てるのではなく、施工現場を「工場化」できる点が特徴だ。建物の外壁の位置など設計したデータを読み込めば、ノズルが自在に動き回って建物の躯体をプリントする。ユニットは1、2日で組み立てられ、高さ10m、横15m、縦45mまで拡張できる。ファビアン氏は、「設計者が世界のどこにいようともデータを送信するだけで、どこにでも建物などを建設できるようになる」と説明する。
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