スマートフォンや顔認証技術により鍵を開ける「スマートロック」が国内でも普及し始めている。単なる物理鍵の代用だったものが、省人化や無人化といったDX推進の起点として事業化されるようになった。オフィス改革や不動産管理、シェアリングサービス……。新たなサービスの起点になり始めている。
スマートフォンを使って鍵を開錠/施錠する「スマートロック(電子錠)」が日本に登場してから早6年。鍵システム開発のビットキー(東京・中央)によれば、「スマートロックという言葉の認知度は7割近くあるが、実際に運用している消費者は数%」(江尻祐樹・CEO=最高経営責任者)という。そんなスマートロックが今、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進の鍵として進化し始めている。
スマートロック事業を新たな収益の柱としてサービス開発を進めているのが大崎電気工業だ。同社は一般家庭や事業所などで電力消費量を測定する電力計の国内最大手。主力のスマートメーターは検針員が確認して回らなくても自動で検針し、遠隔で電力の接続や切断ができるのが特徴だ。
電気系事業は同社の売上高の90%以上を占めているが、大手電力会社が置き換えを進めていたスマートメーターの需要が一巡したこともあり、スマートロック事業の育成を急いでいる。その起点となる製品が、スマートメーターの技術を活用して2018年に開発されたスマートロックの「OPELO(オペロ)」だ。
この製品に鍵穴はない。多くのスマートロック製品がシリンダーやサムターン(施錠解錠するためのつまみ)に機器を設置するのに対して、オペロは内部の錠ケースと直接つなげるように設置する。テンキー入力、スマートフォン、「Suica」などのICカードなどが物理鍵の代わりとなる。時間限定や1度きりしか使えないパスワードを生成することもでき、遠隔操作も可能だ。
「鍵にまつわる業務を全て省人化することを目的に開発した」。大崎電気で新事業推進室長を務める小野信之執行役員はこう語る。飲食店の開店・閉店時や不動産の賃貸物件の内覧など、鍵の管理や受け渡しを巡る業務は意外と多い。不動産では借り手が変わればそのたびに鍵を交換する必要もある。民泊では予約・決済をウェブ上で済ませられたとしても、鍵の受け渡し時のみ対面する場合も多い。地域の集会所では当番制で物理鍵を管理することもある……。「DXを進めても鍵の管理には人手が必要で、それが業務改革を阻害している側面があった」(小野氏)
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