東京電力福島第1原子力発電所で廃炉作業が進められている。誰も経験のない極限環境での作業はどのように行われているのか。作業を支える「廃炉メカ」技術の今を探った。
炉心溶融に至った1~3号機の廃炉にとって、大きな関所となるのが溶融燃料(デブリ)の取り出しである。
デブリとは、ウラン燃料そのものと、金属製の燃料被覆管などが溶けた後に冷え、再び固まったもの。圧力容器の底部や格納容器の底部に溶け落ちているとされる。廃炉を実現するには、このデブリを取り出して輸送容器に収容し、原子炉建屋の外に運び出さなくてはならない。

8基の主要パーツを畳んで格納
その取り出し作業のカギとして開発が進むのが、格納容器の内部にあるデブリにアクセスするための全長約22m、質量約4.6トンという巨大なロボットアームだ。主な動力は電動モーター。三菱重工業と原子力関連企業の英ヴェオリア・ニュークリア・ソリューションズ(VNS)が共同で開発した。
2022年に、このロボットアームを使った試験的な取り出しが2号機で始まる。アームの先端に取り付けた回収装置で1gほどの燃料デブリを数回にわたって回収し、持ち帰るのが目標だ。現在、そのための動作試験が英国で続けられている。
取り出したデブリは、日本原子力研究開発機構の大熊分析・研究センター(福島県大熊町)に持ち込んで分析する。将来の本格的なデブリ取り出しに向けて、基礎となるデータを取得するのが狙いだ。
三菱重工とVNSが開発するロボットアームは、格納容器の側面に開く保守点検用の貫通穴「X-6ペネトレーション」(以下、X-6ペネ)を通り、格納容器の内部に進入する。アームの材料は主にステンレス鋼とアルミニウム合金で、断面が幅約25×縦約40cmの長方形である。全長が22mもあるので、非常に細長い。直径約60cmのX-6ペネを通過した上で、デブリに到達するために必要なのがこの長さだった。細長い主要パーツ8基を関節でつないで全長22mの長さを実現している。
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