東京電力福島第1原子力発電所で廃炉作業が進められている。誰も経験のない極限環境での作業はどのように行われているのか。作業を支える「廃炉メカ」技術の今を探った。

 炉心溶融に至った1~3号機の廃炉にとって、大きな関所となるのが溶融燃料(デブリ)の取り出しである。

 デブリとは、ウラン燃料そのものと、金属製の燃料被覆管などが溶けた後に冷え、再び固まったもの。圧力容器の底部や格納容器の底部に溶け落ちているとされる。廃炉を実現するには、このデブリを取り出して輸送容器に収容し、原子炉建屋の外に運び出さなくてはならない。

<span class="fontSizeL">大規模取り出し用のロボットアーム</span>
大規模取り出し用のロボットアーム
全長22mのロボットアームに先立ち、国際廃炉研究開発機構と三菱重工業が2019年4月に公表した、大規模なデブリ取り出し用ロボットアーム。関節は6軸の油圧駆動。幅0.7×高さ0.92×長さ7.1m、質量約4トン。格納容器の側面に貫通穴を開け、内部に進入する

8基の主要パーツを畳んで格納

 その取り出し作業のカギとして開発が進むのが、格納容器の内部にあるデブリにアクセスするための全長約22m、質量約4.6トンという巨大なロボットアームだ。主な動力は電動モーター。三菱重工業と原子力関連企業の英ヴェオリア・ニュークリア・ソリューションズ(VNS)が共同で開発した。

<span class="fontSizeL">ロボットアーム</span>
ロボットアーム
全長約22m、幅約25×縦約40cm、質量約4.6トン、自由度18軸。2号機デブリの試験的な取り出しに使う(写真=国際廃炉研究開発機構・三菱重工業・英ヴェオリア・ニュークリア・ソリューションズ提供)
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 2022年に、このロボットアームを使った試験的な取り出しが2号機で始まる。アームの先端に取り付けた回収装置で1gほどの燃料デブリを数回にわたって回収し、持ち帰るのが目標だ。現在、そのための動作試験が英国で続けられている。

 取り出したデブリは、日本原子力研究開発機構の大熊分析・研究センター(福島県大熊町)に持ち込んで分析する。将来の本格的なデブリ取り出しに向けて、基礎となるデータを取得するのが狙いだ。

 三菱重工とVNSが開発するロボットアームは、格納容器の側面に開く保守点検用の貫通穴「X-6ペネトレーション」(以下、X-6ペネ)を通り、格納容器の内部に進入する。アームの材料は主にステンレス鋼とアルミニウム合金で、断面が幅約25×縦約40cmの長方形である。全長が22mもあるので、非常に細長い。直径約60cmのX-6ペネを通過した上で、デブリに到達するために必要なのがこの長さだった。細長い主要パーツ8基を関節でつないで全長22mの長さを実現している。