国内ECの市場規模はこの10年で2.5倍と急成長を遂げた。一方で顧客に商品を届ける肝心の物流網はデータの流れが滞り非効率さが目立つ。物流の目詰まりを起こす「デジタル化の壁」を突破する挑戦者が、相次ぎ登場している。

 長年解消されない日本の非効率な物流網。根源にあるのが「デジタル化の壁」だ。荷主、倉庫会社、そして配送会社。日本の物流網を構成する各企業のシステムは事実上、サイロ化された状態にある。それぞれの電子化が遅れるばかりかデータの標準化や連携も遅々として進まない。デジタル化を寸断する壁が各所に立ちはだかるため、今なお人手が多く介在し、現場の負担が減らないばかりか誤出荷をなくすのも難しくなる。

物流網の各所にデジタル化の壁
●物流業界が直面している課題
<span class="fontSizeL">物流網の各所にデジタル化の壁</span><br> <span class="fontSizeM">●物流業界が直面している課題</span>
[画像のクリックで拡大表示]

 この壁を突破すべく一手を講じた物流大手がある。

 東京地下鉄(東京メトロ)東西線の南砂町駅から数分歩くと、東京ドーム3.6個分に相当する延べ床面積約17万m2の巨大施設が姿を現す。佐川急便を傘下に持つ物流大手SGホールディングス(HD)が、2020年1月に開設した総合物流拠点「X(エックス)フロンティア」だ。

 その一角では20年4月、EC(電子商取引)事業者に向けた新たな物流支援サービスが始まった。

物流をサブスク、小口も気軽に

 それがECで販売している商品の入庫から検品、保管、発送まで一連の物流業務を、SGHD傘下の佐川グローバルロジスティクスが一括して請け負う「シームレスECプラットフォーム」だ。商品保管スペースやマテリアルハンドリングなど物流設備やシステム、作業員のリソースを、複数のEC事業者で共同利用する仕組みだ。

複数のEC事業者で保管・配送機能を共有
●佐川グローバルロジスティクスの「シームレスECプラットフォーム」
<span class="fontSizeL">複数のEC事業者で保管・配送機能を共有</span><br> <span class="fontSizeM">●佐川グローバルロジスティクスの「シームレスECプラットフォーム」</span>
[画像のクリックで拡大表示]

 ECを手掛ける企業にとって、1社で倉庫や作業員などを手配する負担は頭の痛い問題だ。セールの際などに臨時で保管スペースや人員を増やすといった手間も大きい。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り2088文字 / 全文2846文字

【春割/2カ月無料】お申し込みで

人気コラム、特集記事…すべて読み放題

ウェビナー・音声コンテンツを視聴可能

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「テックトレンド」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。