小売り分野で、人工知能(AI)やロボットを活用して業務を効率化・省力化する動きが広がっている。人手や経験に頼ってきた業務を自動化し、売り上げ増につながるケースも出てきた。コロナ禍で非接触のニーズが顕在化したこともあり、小売りの在り方そのものも大きく変わろうとしている。

 JR東日本ウォータービジネス(東京・品川)は2020年12月、自社で運営する自動販売機の最適な商品ラインアップなどを予測する人工知能(AI)システム「HIVERY Enhance(ハイバリーエンハンス)」を導入した。今年3月では約1600台が対象になっている。

売り上げの最大化と販売平準化を目指す
●JR東日本ウォータービジネスが導入したAIシステム
オペレーターはAIに提案されたラインアップに自らの知見を織り交ぜて補充する
提案の例。赤枠はAIが提案した新たな商品で、青枠はラックの位置入れ替えを提案した商品

 同社の自販機では、事前に決めた「指定商品」が7割、商品補充や現金回収などを担うオペレーション会社が決めた「選択商品」が3割を占めていた。AIシステムは主に選択商品についてPOS(販売時点情報管理)データに気象データなどを加えて分析し、棚割り表を提案。オペレーターが自身の経験も掛け合わせて品ぞろえと配置を決める。

 AI導入で売り上げを伸ばしたケースも出てきている。JR久里浜駅(神奈川県横須賀市)にある自販機では、売り上げが以前に比べ約2割増加した。主な要因は、それまで手薄だった1本当たりの量が多いカフェオレやココアなどの品を充実させたことだ。

 JR東日本ウォーター自動販売機事業部の東野裕太氏によると、「タクシー需要が多い久里浜駅ではタクシー運転手の好きそうなショート缶のコーヒーをそろえ、甘い飲み物を加えることは敬遠していた」という。いざ蓋を開けてみると、AIの予想は的中した。

 同様に、戸塚駅(横浜市)では売り上げが17%アップした。AIを導入した自販機全体の平均では、未導入機と比べて1.5%前後の売り上げ増となった。

機会損失の回避にも

 販売増以外の効果が売れ行きの平準化だ。自販機の場合、商品のうち1つでも売り切れが出ると機会損失につながるため、オペレーターが補充に向かわなくてはならない。全ての商品がなるべく同じタイミングで売り切れることが理想だ。

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