ピーク時よりは減少傾向にあるとはいえ、年間8万件以上発生し小売業者を悩ませている万引き。防犯や犯人の早期検挙に向け、顔認証やAIを活用した仕組みが進化している。重要なのは「万引きはできない」と思わせる環境づくりとも言える。

件数は減少も、根絶は遠く
●万引き認知件数の推移
出所:警察庁

 軽い気持ちで手を染めやすく、ほかの犯罪のきっかけになる「ゲートウェイ犯罪」の一つともされる万引き。警察庁がまとめた2020年の認知件数は8万7278件で、04年の15万8020件をピークに減少傾向にある。

 ただ、全国万引犯罪防止機構が18年にコンビニエンスストアやスーパー、ドラッグストアなどを対象にまとめた報告書によると、調査に回答した209社だけでもその被害額は年間13億7634万円にも上る。

 その手口も年々変化している。最近になって目立っているのがマイバッグを利用した万引きだ。20年にスーパーやコンビニなどでレジ袋の有料化が進み、マイバッグを持つ買い物客が増えたことが背景にある。薄利多売の小売店にとり、収益の悪化に直結する万引きへの対応は依然として大きな悩みの種であり続けている。

 それだけに被害軽減につながる防犯システムのニーズは大きく、そのテクノロジーは着実に進化している。

 これまで万引き対策として最も一般的に使われていたのが防犯カメラだ。ただ、被害が判明した後に録画映像を見直して警察に届け出ても、犯人の検挙までに時間を要するという課題があった。

 店舗側の自衛策として、過去には店舗が自ら防犯カメラの映像から切り取った万引き犯の画像を掲示するなどして情報提供を呼び掛ける例もあったが、プライバシー保護の観点から問題視されることも少なくなかった。

高い再犯率を逆手に

 そうしたなかで普及が進んでいるのが顔認証機能だ。万引きは一度手を染めると、何度も繰り返す再犯率が高いとされる。常習犯や、要注意人物など事前に登録しておいた人物が来店し、カメラに映るとシステムが検知することで従業員や警備員らのスマートフォンなどに通知して警戒を呼び掛けることができる。

 貨幣処理機で国内シェアトップのグローリーが手掛けるシステムもその一つ。通貨や紙幣の種類や真贋を見分けてきた画像識別技術を手書き文字や印鑑にも応用。00年ごろからは生体認証の分野にも広げていった。

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