業務や作業に沿った独自のAIを開発する動きがいろいろな業種で加速している。狙いの一つは職人技の作業を支援し、現場の負担軽減につなげることだ。高炉の操業支援、商品コンセプトに合う香料の配合など、その内容は多岐にわたる。
日本製鉄は室蘭製鉄所・第2高炉で、同社として初めてAIを用いた炉内状況予測システムを導入した。
この高炉は改修のため操業を休止し、2020年11月に再稼働させた。AIが熱風の送風量や原料の投下量など「職人技」だった高炉の最適なオペレーションを現場オペレーターに提示し、業務を支援する。安定的に操業すると同時に、業務の負担軽減につなげるのが狙いである。
高炉は鉄鉱石を高温で還元し、鉄鋼製品の基となる銑鉄を作り出す。高炉内部は2200度を超えるため、状態の把握が難しい。現場オペレーターは交代制で1つの炉につき常時1人張り付き、高炉の外壁に付けた圧力計などの情報から炉内の状況を推測して、熱風の送風量、原料の投下量などを調節している。「判断が経験によるところも多く、職人技の世界だった」と山田和治製銑技術部主幹は話す。
最適なオペレーションに
高炉の熟練オペレーターが少なくなる中、職人技に頼り続けるのは限界がある。そこで高炉の外部に付けた約1000個のセンサー情報を基に最適なオペレーションを判断できるAIを開発した。
AIは生産プロセスに沿ったルールベースのアルゴリズムを基本に、機械学習も活用して開発した。センサーで取得したデータから機械学習モデルなどを用いて分析するほか、風量調整などの操作をした後の炉内状況をシミュレーションするモデルを組み合わせている。「炉内の状況が変化するのは、操作してから数時間後になるので、状況を予測する必要がある」(山田主幹)ためだ。
日本製鉄は30年以上前からルールベースの自動制御システムを開発してきた。しかし、複雑な生産プロセスなどのために「ルールを変更するのに手間がかかり、定着しなかった」(山田主幹)という。
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