建築・都市の設計でDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速。多様な設計案を自動生成するジェネレーティブデザインが実用段階に入った。バーチャル空間の設計を手掛ける建築設計事務所も現れた。

サッカーの聖地を擁する有名な再開発エリア
ウェンブリーパークを北東側から望む。英クインテインは2004年に85エーカー(約34万㎡)の開発許可を得て以来、このエリアの活性化に力を入れてきた。写真左手がウェンブリースタジアム。そのやや下の敷地が、新たに集合住宅を建設するエリア(写真=クインテイン提供)

 英ロンドンのウェンブリーパークは、サッカーの聖地「ウェンブリースタジアム」で知られる再開発エリアだ。デベロッパーの英クインテインは2004年に開発許可を得て以来、荒廃した工業地帯に商業施設やオフィス、住宅などを次々に整備してきた。次なる開発エリアは、スタジアム北東に位置する12エーカー(約4万8000㎡)の区画。2000戸を超える規模の賃貸マンションなどを建てる。着工は21年後半の予定だ。

 クインテインがかつて作成した設計案には、事業性と住環境の両立に課題があった。供給戸数を増やして事業性を高めようとすると、採光などに問題が出る。建物を高層にすれば戸数を増やせるが、影が増えてコストも増大する、といった具合だ。

 広場を確保しつつ必要な採光性能を満たし、可能な限り戸数を増やすにはどうすべきか──。複雑な問題を短時間で解くために目をつけたのが、米サイドウォーク・ラボ。米グーグルの兄弟会社で、スマートシティーなどの都市開発に取り組む。

4万種を生成、24種の改善案

サイドウォーク・ラボが開発した「デルブ」
(図=サイドウォークラボ提供)

 クインテインはこの区画の開発計画に、サイドウォーク・ラボが20年10月にプロトタイプを発表した「デルブ」と呼ぶジェネレーティブデザインツールを使用した。AI(人工知能)の一種である機械学習を利用し、与条件を満たす施設配置案を大量に生成。設定した指標に基づいて各案を評価し、優れたプランを提示する。

 デルブを使うにはまず、商業施設や住宅の総床面積などを入力し、高さ制限などの制約条件、コストや採光といった成果指標、生成した設計案の良しあしを評価するためのベンチマークを定義する。続いて既存の公園や道路形状などの敷地情報を入力する。

 ウェンブリーパークでは、建物のボリュームやプログラム、街路の構成と広場面積を入力値とし、約1万4000㎡のオープンスペースを設け、高さ制限を順守することを制約条件とした。成果指標は住戸数と採光性能、建設コストや価格など。ベンチマークは以前の設計案だ。

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