足の動きを「見える化」するスマー トシューズやスマートインソールの開発が広がっている。靴に搭載したセンサーが動きを検知し、無線通信を使ってデータを蓄積。フォームの評価をフィードバックする。ランナー向けスポーツシューズや高齢者や患者向けインソールなど、足から得る情報に期待が集まる。

 「もう少しピッチを上げてみましょう」「右足は上方向に蹴り出している傾向にあります」──。

 専用のアプリケーションをダウンロードしたスマートフォンを持って走ると、こうした音声が流れる。ランニング後には「キック効率」や「キック力」といった5項目を5段階で評価し、「より力強く蹴り出すとストライドが伸びて無理なくスピードを上げることができます」などと左右の足別にアドバイスを得られる。

 2020年12月に、アシックスが店頭販売を始めた同社初のスマートシューズ「EVORIDE ORPHE(エボライドオルフェ)」だ。ミッドソール内部に搭載する小型センサーが計測した足の回転数や歩幅、足の接地角度といったデータを無線でスマホに送信。これまでに収集してきた1000人以上の一般ランナーのデータを基に、76パターンからその人に合わせた走法を助言する。

センサーで走行フォームを分析して助言する
●アシックスが発売した「エボライドオルフェ」
ノーニューフォークスタジオの技術を使ったセンサー(右)を搭載。ピッチ数や歩幅、接地角度などを測定する

足が浮いていても状態を把握

 アシックスがスマートシューズの開発に乗り出したのは17年。同社スポーツ工学研究所の猪股貴志・主任研究員はもともとランニングシューズの構造設計を担当し、けがを防ぐ靴の構造や疲労時の走行フォームの研究をしていた。「靴だけでは商品を提供して終わってしまう。けがを防止したり、能力を高めたりできる情報を顧客一人ひとりに提供するにはIoTが有用だと考えていた」と語る。

 センサーを手掛けるのは、14年設立でスマートシューズ開発を手掛けてきたノーニューフォークスタジオ(東京・千代田)だ。エボライドオルフェでは加速度センサーと角速度センサーを使用しており、「足の浮いているときでも、どのように曲がっているか、上がっているかを把握することができる」(同社の菊川裕也CEO=最高経営責任者)。同社が19年に発売したランニング用スマートシューズではセンサーの重量は35gあったが、ランニング時の違和感が少なくなるようにセンサーの設計を見直し、20gに軽量化した。

 アシックスは子供向けのスマートシューズについても、販売に向けて実証実験を20年11月から実施中。今後もスマートシューズの開発を広げていく考えだ。

 データの取得など新たな機能を持つスポーツシューズの開発は活発になっている。矢野経済研究所が20年10月に公表したスポーツシューズに関する市場調査によると、20年の国内出荷量は新型コロナウイルスの影響で、前年比87%とマイナス成長を予測する。

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