家電で今後の成長分野と期待されているのが、「ヘルスケア」と「美容」だ。IoTやAIを起点に様々なサービスを構築できる可能性がある。そこにはハードウエア単体では完結しない、新しい家電の姿がある。
「ヘルスケア」「美容」関連の家電において大変革の鍵を握るのが、IoT(モノのインターネット)とAI(人工知能)だ。IoTで家電をインターネットに接続して、ユーザーの使用状況や周囲の状況などのデータを吸い上げてAIで解析し、個々のユーザーが欲する機能を提供する。従来のように新製品を買ったら後は陳腐化していくのではなく、ネット経由でアップデートし、常に最新の状態を保つ。
歯磨きのカスタマイズコース
ヘルスケアの場合、口腔ケアのパーソナライズに力を注いでいるのがパナソニックだ。同社は2020年10月、電動歯ブラシ「ドルツEW-DT51」を発売した。同製品にはスマホアプリを介して、ユーザーの口腔に合った歯磨きができるように、カスタマイズコースを設定できる機能がある。
具体的にはアプリ上の問診を通し、どこの歯並びが悪いのか、歯茎の痛い部分がないかなどの口腔データを収集して歯磨きのコースを作成できる。例えば、歯茎に痛みがある部分を磨く場合、電動歯ブラシの動作モードが自動で弱くなる。
口に関連することでも、歯ブラシではなく「咀嚼(そしゃく)」に着目した新しい製品を開発したのがシャープだ。「健康」を今後の生活家電のキーワードに掲げる同社の新規事業である。開発した「バイトスキャン」は、耳にかけてユーザーがどれだけ咀嚼したのかを定量化するデバイスだ。
赤外線の距離センサーと3軸加速度センサーを内蔵し、距離センサーが耳裏のくぼみ部分の皮膚の動きを捉えてどれだけ咀嚼したのかを判定。3軸加速度センサーで食事の動作・姿勢をセンシングする。
人間の咀嚼に関するデータ数は少ない。そこでシャープは同製品を介して、今までにないヘルスケアデータの収集を狙っている。例えばかむ回数、かむテンポ、食事時間などのデータと、口腔、BMI(体格指数)などのデータを組み合わせることによって、食物の咀嚼に関するメリットが明らかになるかもしれない。同社は咀嚼のメリットを解き明かすだけではなく、咀嚼を習慣づけるプログラムの提供も目指していく。
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