製品の売れ行き変動などでデジタルトランスフォーメーション(DX)のニーズが高まっている。リードタイムの課題に取り組むところがあるほか、製品仕様の策定支援システムを開発する動きもある。そのための人材確保にも企業は知恵を絞る。
新型コロナ以前、業務効率化や利益拡大のためのDX(デジタルトランスフォーメーション)は、安定した社会状況を前提にしていた。ところが製品の売れ行きの急激な変動、顧客の要求の変化などでDXは変化への対応力の優先順位が大きく上がっている。
三菱総合研究所デジタル・トランスフォーメーション部門企業DX本部製造DXグループリーダー主席研究員の小橋渉氏は「潮目が変わってきた。企業は変化への機敏な対応が以前にも増して必要になっている」と言う。
リードタイムの長さが顕在化
カシオ計算機の場合、腕時計の生産サイクルを従来の3分の2へと一気に短縮する生産改革を実施する。デジタル技術をフルに活用し、生産準備と製造の工程を圧縮。これまで3カ月かかっていた生産の計画から出荷までの期間(製造リードタイム)を、2カ月に短くする。2020年6月に改革プロジェクトを発足しており、21年4月から実施する計画だ。
改革の中核は、自動生産ラインの導入などでスマート化した工場だ。営業部隊からの需要情報を工場に直結し、生産に着手する前の準備期間を短縮する。部品を生産するサプライヤーとの間で緊密に情報をやり取りできるように情報システムを整備し、部品が入荷するまでの時間も短くする。加えて、製品を組み立てる時間も自動化ラインによって短縮する。
背景にあるのは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けた製品の需要の急な変化に、カシオ計算機の工場が対応しきれなかったことだ。

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