「セキュリティートークン」と呼ばれるデジタル証券の発行に取り組む企業が増えている。投資家の情報を把握しやすくなり、ポイントの付与でファン獲得を狙う企業もある。従来の「お金志向」から「体験志向」へ。投資層の裾野を広げようと知恵を絞る。

<span class="fontBold">神奈川県葉山町の古民家「平野邸 Hayama」(左)。デジタル証券で新たな投資家を呼び込み地域活性化にも結びつけたい考えだ</span>(写真=中央:PIXTA)
神奈川県葉山町の古民家「平野邸 Hayama」(左)。デジタル証券で新たな投資家を呼び込み地域活性化にも結びつけたい考えだ(写真=中央:PIXTA)
[画像のクリックで拡大表示]

 「わあ。すてきな庭。昔の家の雰囲気で心が和みますね」。東京から来た女性宿泊客は目の前に広がる庭木を見て歓声を上げた。縁側には長年使われた古びたミシンが置かれ、畳の居間には「SONY」と大きく印字された古いラジオが置かれている。昔の日本にタイムスリップしたような感覚だ。

 ここは、別荘地で知られる神奈川県葉山町にある「平野邸 Hayama」。築80年以上の古民家を改築し、日本らしい暮らしを体験できる1棟貸しの宿泊施設として営業している。宿泊料金は1泊4万円からと安くはないが、10人以上の団体客も泊まれる。東京から車で約1時間前後とアクセスも良く、近くにはマリーナなど人気スポットも多い。地元の人が集まる料理教室などの催しも定期的に開かれており、地域の交流の場所としても活用されている。

不動産をデジタル証券化

 平野邸はクラウドファンディングの手法を利用して約80人の投資家から集めた1500万円を元に、ファンドが運営する。ファンドは宿泊業などで得た利益を投資家に分配する。こうしたスキームを活用した古民家再生事業は珍しくないが、ここでのある取り組みが投資家の注目を集めている。それが不動産の「デジタル証券化」だ。

 ファンドを運営するエンジョイワークス(神奈川県鎌倉市)が不動産情報サービスのLIFULLなどと協業。ファンド運営期間中の事業の利益を受け取る権利(出資持ち分)を証明する「セキュリティートークン(ST)」と呼ばれるデジタル証券を2021年1月に発行する予定だ。デジタル証券は、安全性が高いブロックチェーン技術を使うため、第三者による認証がなくても自分の権利を証明でき、他の投資家への譲渡が容易になるなどの利点がある。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り2560文字 / 全文3410文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

オリジナル動画が見放題、ウェビナー参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「テクノトレンド」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。