電気自動車(EV)の市場は急激に拡大している。ハイブリッド車(HV)などを含めれば、電動化の割合はさらに高くなるだろう。機械系の部品もEV化で生まれるニーズに対応した新しい技術が必要だ。

 自動車のパワートレーンとしてモーターを使用する電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)など、電動車の市場規模は着実に拡大している。電子・電気部品の搭載量が増える一方で、機械部品は減っていくだろう。これまで自動車産業を支えてきた機械系の部品メーカーに大きな変革の嵐が襲い掛かろうとしている。必要になるのは、EVに代表される電動車が主流になる時代において、そこで使われる部品に対するニーズを先取りし、自社の保有技術を生かしながら変えるべきところを変えて、発展させていく姿勢だ。

EV時代におけるメカ部品への影響
<span class="fontSizeM">EV時代におけるメカ部品への影響</span>
パワートレーンがエンジンからモーターへと置き換わることで、部品への要求が大きく変化する。その変化に対応した部品が本格的に増えてきた
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電動車に機械部品は必要

 本格的なEV時代を迎えるに当たって、機械系部品メーカーにどのような影響が表れるかを考えてみよう。そこでは、大きく3つの切り口がある。

 最も大きいのが、構成部品の変化だ。EVではエンジンの代わりにモーターが搭載され、付随して燃料タンクはバッテリーへと置き換わる。このため、例えばエンジンを構成する部品はEVでは使われなくなり、自動車業界全体で見ても数が減っていく。それでも「走る」「曲がる」「止まる」という自動車の基本性能を実現するためには多くの機械系部品が必要だ。例えば軸受。エンジンよりも数は減るが、モーターでも不可欠な部品だ。ただし、エンジンの軸受をそのままモーターに使うわけではない。ここで必要となってくるのが、EVに対応した進化だ。

 例えば、ジェイテクトはEVやHV対応の軸受を相次いで発表している。2019年10月には「クリープ摩耗抑制玉軸受」、20年5月には「電気自動車モータ用高速回転グリース潤滑玉軸受」、20年6月には「電動車駆動モータ用電食防止軸受」を発表した。

ジェイテクトが開発したEV対応軸受
ジェイテクトが開発したEV対応軸受
EVやHVでの利用を想定した軸受を相次いで発表した。モーターの高速回転化対応や電食防止、クリープ現象の抑制といった機能を備える
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