「やって覚えろ」「見て学べ」──。そうした建設業界の技能伝承が行き詰まっている。技術や技能が失われつつあるなか、効率よく伝える切り札となるのがデジタル技術だ。熟練者の動作や視線を分析してノウハウを解明。3次元の教材も駆使する「伝承テック」に注目が集まる。

 建設業界を長年悩ませてきた技能継承の問題を、デジタル技術を駆使して解決しようとする動きが巻き起こっている。伝えられてきた技能のコツを明らかにし、次世代に効率よく継承する試みだ。

熟練技能者の作業を記録・分析

作業状況などを記録・分析して生産性を維持
(写真=浅沼組提供)
技能継承の問題は年々深刻化
厚生労働省が毎年実施する能力開発基本調査で、「技能継承に問題がある」と答えた事業所の割合。2014、15年度と17年度はこの項目について調査していない。18年度は質問方法が異なるため除外した

 例えば、熟練技能者がウエアラブルカメラで手元の動きを撮影した動画があれば、新規入職者が作業手順を理解しやすい。浅沼組が開発した「アイマップシステム」は、技能者の作業映像に加え、現場内の移動経路なども記録・分析する。GNSS(衛星測位システム)のアンテナとカメラを一体化した「アイロガー」を技能者のヘルメットに装着し、鉄筋の結束作業などを技能者目線で記録した映像を蓄積し始めている。

 アイマップは、2018年度から3年続けて内閣府の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)に採択された。20年度は、橋脚にタブレットのカメラをかざせば作業記録の映像などが画面に表示されるシステムの実証実験を進める。「技能継承は業界全体の問題だ。将来的には国土交通省などと連携し、記録したデータを異なる会社間でも共有できるシステムにしたい」。浅沼組新技術事業化推進室の田村泰史課長はこう意気込む。

 国交省も20年度に、デジタル技術を使った技能継承を模索。ICT(情報通信技術)などをフル活用して業務の課題解決を目指す「インフラDX(デジタルトランスフォーメーション)」の一環だ。その一つとして、コンクリート構造物の効率的な構築方法を調べる。まず、鉄筋や型枠のつり上げに用いるクレーンに重量センサーを取り付け、稼働率から1日の「生産量」を概算する。次に、技能者にもセンサーを装着して作業時間を記録。生産量を作業時間で割れば、その日の作業効率が求まるという算段だ。「日々の効率の良しあしを数値化して、その理由を技能者にヒアリングすれば、作業のコツを聞き出せる」と、国土技術政策総合研究所社会資本システム研究室の関健太郎室長は言う。

続きを読む 2/3 動作分析で作業のコツを可視化

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