再生可能エネルギーが台頭する中、電力を出し入れする据え置き型蓄電池の重要性が高まっている。そのなかでも期待が集まるのが、日本で約40年前から開発されている大型の「レドックスフロー電池」だ。住友電気工業のほか、関連スタートアップ企業には準大手ゼネコンが出資。プレーヤーも広がりを見せる。

自動車向けワイヤハーネスや電装品を主力とする住友電気工業が、次の成長事業として期待する製品がある。「レドックスフロー電池」と呼ばれる大型蓄電池だ。電解液を外部タンクにため、隔膜で分けた正と負の電極にそれぞれ循環させることで、充電や放電を制御する。
「(電源構成に占める再生可能エネルギーの割合を4分の1弱とする計画の)2030年に向け、洋上風力発電などが本格的に立ち上がっていけば、年数百億円規模の売り上げは狙える」(同社の高田雅都エネルギーソリューション営業部長)
住友電工は7月、北海道電力の送配電部門、北海道電力ネットワークから出力が1.7万キロワット、容量は5.1万キロワット時の同電池の設備を受注した。
原子力発電を活用する際に電力の需給をマッチングさせる手段の一つとして、住友電工が1980年代から電力会社と開発を始めたレドックスフロー電池。ただコストなどに難があり、事業として花が開くことはなかった。
「FIT後」の需要にらむ
開発開始から20年以上がたった2010年代、この電池を取り巻く環境に変化が生まれた。11年の東日本大震災を機に、太陽光発電など再生可能エネルギーの導入が急速に進んだのだ。
再エネは気候などによって発電量が大きく変化する。これまでは火力発電で需給を調整してきたが、二酸化炭素の排出削減などの観点から「火力を使えない時代になってきた」(住友電工のエネルギーシステム事業開発部の古金谷正伸・企画業務部長)。再エネ比率が高まれば、発電電力と負荷のバランスが崩れて送配電網に影響を与える懸念も指摘される。蓄電池の必要性が一段と増してきた。
導入先も多様化している。住友電工が開発し始めた当時は、工場など電力の大口需要家側向けに、蓄電池の設置と電力会社が用意した需要のピーク時以外の電気料金を割安にするプランをセットで提案する形を想定していた。今後は北海道電力ネットワークのような送配電事業者が、小規模な再エネ発電を管理する手段として導入を進める事例が増えそうだ。
また電力会社が再生可能エネルギーを固定価格で買い取る「再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)」は今後、市場価格に上乗せする利幅の方を固定する制度へ移るといわれる。価格が高いタイミングで供給量を増やすため、再エネ発電事業者が蓄電池を導入するインセンティブも増していく。
矢野経済研究所の予測では、現在主流のリチウムイオン電池に代わる次世代電池の世界市場は18年の636億円から30年に1兆4940億円に拡大する。うちレドックスフロー電池は3253億円で、種類別では電気自動車(EV)向けで有望視される全固体電池や、レアメタルを使わない有機2次電池に次ぐ規模だ。
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