コロナ禍による中食シフトにより、宅配や家庭で食品の鮮度やおいしさを維持する冷蔵・冷凍技術が注目されている。適切な温度で保存できれば作業効率の向上や消費電力の削減につながり、保存期間を長くすることも可能に。廃棄せざるを得なかった食品を有効に活用できるようになるなど、フードロスの解消にもつながる。
●12度が融点の適温蓄冷材


新型コロナウイルスのまん延は人々の生活を一変させた。外出自粛や飲食店などの営業自粛により、家で調理をする内食や調理されたものを家で食べる中食へと需要がシフトしている。
日本フードサービス協会によると、7月の外食市場の売上高は前年同月比85%。これはテークアウトやデリバリーも含まれた数字で、外食需要の回復はまだまだ先になりそうだ。
こうした状況で改めて注目を浴びているのが、冷蔵や冷凍による保存技術だ。生鮮食料品をいかにおいしく保存するかはもちろん、生産性の向上や社会課題の解決などにも役立たせようと、各社が様々な工夫を凝らしている。
コロナ禍で生鮮食料品の宅配需要が増加する中、7月下旬に新たな蓄冷材を本格的に導入したのがパルシステム生活協同組合連合会(東京・新宿)だ。パルシステムでは、農産物などを発泡スチロールの箱に入れて利用者宅に運んでいる。
パルシステムでは玄関先に荷物を置いておく「置き配」に対応しているため、屋外で長時間にわたって保冷し続けなくてはならない場合もある。特に気温が高い春から秋にかけては箱の中の温度を一定以下に保ち、食品の鮮度が落ちたり腐ったりしないようにするための蓄冷材が不可欠だ。
もともとは0度前後に融点と凝固点を持つ氷のような蓄冷材を青果に用いていた。配送前日の夕方から夜にかけて蓄冷材を箱内に入れる必要があったが、この時間帯は人手不足が課題になっていた。「日中に子供が学校などに行っているときに働きたいという人は結構いた」(パルシステム連合会物流部部長の茂木洋介氏)
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