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新型コロナウイルスの流行が長引き、在宅勤務や外出自粛が続く中で「コロナ太り」が懸念されている。運動不足が慢性化する中、家庭での食事を中心に食生活の見直しを図る人も多いのではないか。改めて注目されているのが、お米やパンなど主食の糖質を制限できる技術。関連家電も続々登場している。

 新型コロナウイルス感染症は多くの人の仕事のあり方や生活パターンを一変させた。在宅勤務や外出自粛が続き、運動不足からくる体重の増加に悩む人も少なくない。オンラインでトレーニング指導を展開するサーティフィット(東京・品川)が全国の20~49歳を対象に実施した調査によると、女性の42.7%、男性の30.4%が「コロナ太り」を経験。女性は平均で2.6kg、男性は3.3kg増えたという。

 外食の機会が減り、自宅で食事することが増える中、改めて注目されているのがダイエットに有効とされる糖質制限だ。糖質を抑えた食品が多く市販されているだけでなく、糖質制限ダイエットをサポートする機能が調理家電の新たな価値になっている。

コメの中の糖質が溶け出す

2層の釜で糖質をカット
●山善の「糖質を減らせる炊飯器」の仕組み
釜が二重構造になっており、糖分が水に溶けるコメの特徴を利用して低糖質の炊飯を実現する

 物理的に糖質を除去する方法でアプローチしているのが山善が販売する「糖質を減らせる炊飯器」だ。2019年11月にマイコン式を、今年8月にIH式を発売した。

 一般的な炊飯器とは違って釜を二重に使って炊飯しており、内側の釜にはいくつもの穴が開いている。大きな鍋で煮たコメを蒸して仕上げる中国の「瀝米飯(リーミーファン)」と呼ばれる調理方法を参考にしたといい、形状は蒸し器にも似ている。

 炊き方はリーミーファンと同様、「煮る」「蒸す」の2工程で行われる。まずはコメを穴の開いた内釜にセットし、水を投入。最初は従来の炊飯のように水位はコメの位置よりも高くなっているが、炊飯時間の経過とともに下がっていき、「蒸す」工程に移行する。こうした過程の中で、コメの中に含まれている糖質が水に溶け出して、穴の開いた釜から外側の釜に流れ出るため、炊き上がったコメの糖質は通常よりも少なくなるのだという。

 一見、単純にも思えるこの仕組み。先行する他メーカーも同様の炊飯器を売り出しているが、「この方法を実現するには火加減の調整が非常に難しかった」と山善家庭機器事業部の近藤富昭係長は話す。

 それは、そもそもこの二重の釜での炊飯が、限られた温度で水に溶け出しやすくなるコメの性質を利用しているからだ。コメは成分の7割以上が糖質(でんぷん)でつくられており、60~80度で煮汁への溶出が多くなるとされる。単に釜を二重にして煮汁を排出できる仕組みにしても、通常の加熱の仕方では十分に糖質を煮出すことはできないのだ。炊飯時間が長くなりすぎると、コメがおかゆのようになってしまい、うまみが失われていってしまう。

 そのため、山善では火力を調整し、60~80度の一定の温度で煮出すプログラムを搭載。実験を繰り返す中では「なぜか通常よりもコメに含まれている糖質が多くなることもあった」(近藤係長)といい、1年近くにわたる実験の結果、最適な火力を見つけ出し、コメ1合当たり角砂糖2個分に相当する7.7gの糖質をカットすることに成功したという。

 近藤係長は「通常と比べると軟らかさは感じるが、コメ本来のうまみはある。釜が2つあっても手入れの手間はそれほどかからず、継続して低糖質のコメをとりやすいのではないか」と自信を示す。

日経ビジネス2020年9月14日号 68~70ページより目次