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先進ITで農業を進化させる「アグリテック」が多方面で進行中だ。農業機械メーカー、食品会社、ITベンダー、ロボットベンチャーなどが参入。それぞれアイデアを具現化し、効果を上げている。

(写真=クボタ提供)

 とある水田でコンバインが黄金色に実った稲穂を端から刈り取り脱穀していく。毎年秋に全国で見られる光景だが、普通ではない点が1つある。コンバインはIoT(モノのインターネット)センサーを備え、収穫したコメのタンパク質含有率や水分量を測定。これらのデータを駆使して新しい農業を実現している。このコンバインを作ったのはクボタだ。同社はデータに基づく営農支援サービス「KSAS」を提供しており、コンバインはその一部だ。

稲作農地の5%を管理

栽培と収穫の農作業を支援
●‌クボタの営農支援サービス 「KSAS」の主要な機能

 KSASの営農支援サービスの契約者は2020年2月末で2000件を超え、管理する農場の総面積は8万2000ヘクタールに達したという。「国内の稲の作付面積が約150万ヘクタールなので、その5%ほどをKSASで管理している計算だ」(クボタで研究開発本部のトップを務める佐々木真治専務執行役員)

 KSASのコンバインはコメを収穫しながら内蔵センサーを使い、農場の単位面積当たりの収穫量、食味に直結するタンパク質含有率などを測定する。これらのデータをあぜ道で仕切った農場の区画ごとにクラウドで解析し、結果をコメの乾燥工程で活用。タンパク質含有率が近いコメを同じ乾燥機に投入して食味のよいコメを高く販売したり、水分量に応じて乾燥機を分け乾燥時間短縮やコスト削減を図ったりする。

 データは翌年の田植えにも使う。タンパク質含有率が低かった農場では肥料を多く、高かった農場では少なくする。タンパク質含有率は高くても低くても食味が悪くなる。そこで施肥量を調整し、タンパク質含有率を適切な範囲に収める。

 KSASを3年間使用した農家のモニターテストでは、コメの収穫量が1ヘクタール当たり5.1トンから5.9トンへと15%増えた。一方、タンパク質含有率は適切とされる5.5~6.5%の範囲に収まった。「KSASによって仮説検証のサイクルを回し、もうかる農業につなげられることを確認できた」。佐々木専務はKSASの成果をこう語る。

 同社は今後1~2年をめどにしたKSASの「ステップ2」として機能強化を進める。これまでは収穫量や食味をあぜ道で仕切った区画ごとに管理していたが、5m四方のメッシュで細分化するのが柱だ。例えば施肥機能を備えた田植え機によって、苗を植えながらメッシュごとに施肥量を調整し、生育のばらつきを抑える。農薬は害虫や病気が発生しているメッシュだけにドローンで散布する。こうしたきめ細かな管理を、人手をかけずに実施する。さらにステップ2の一環で、農場の水位や水温を測定して自動で給排水するシステムの試験販売も始めている。

日経ビジネス2020年8月10日号 64~66ページより目次