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スマートフォンでSIMカードを差し替えずに回線事業者や電話番号を切り替えられるeSIM。対応するスマホやIoT機器が増え、大手通信事業者の寡占に風穴を開けるのに一役買っている。小型チップや完全仮想化技術の登場で、IoT機器の小型化にも寄与している。

 4月に自社回線による携帯電話サービスをスタートした楽天モバイル(東京・世田谷)。開始早々、新型コロナウイルスの影響で店舗閉鎖に追い込まれ、新規契約の9割以上がウェブからの申し込みとなった。これを支えるのが店舗に頼らない契約プロセスの構築だ。

 携帯電話やスマートフォンの契約時に行われるのが、携帯電話事業者や電話番号などの情報が入った「SIMカード」を端末に差し込む作業。大手キャリアではショップ店員が行うのが一般的だ。しかし楽天モバイルオリジナルのスマホ「Rakuten Mini(楽天ミニ)」にSIMカードの差し込み口はない。楽天ミニをWi-Fiにつなぎ、ユーザーに送られたQRコードをカメラで読み込むと、アプリが起動。指示に従って画面をタップするだけで回線が開通する。「eSIM」という新しいタイプのSIMチップが内蔵されているからだ。

iPhoneなど対応端末が拡大

eSIMは小型で耐久性に優れる
●SIMカードとeSIMの比較

 SIMカードに記録された情報は書き換えができないのに対して、eSIMは書き換えができる。楽天ミニの場合、楽天モバイルのサーバーにアクセスし、契約回線の電話番号などの情報(プロファイル)をeSIMに書き込んでいる。

 米アップルの「iPhone(XS、XR以降のモデル)」や米グーグルの「Pixel4」など、eSIM搭載スマホが増えている。アップルの「iPad」、米マイクロソフトの「Surface」などタブレットも対応が進む。

 これまで、端末を変えずに通信事業者を切り替える場合は、SIMカードを差し替える必要があり、乗り換えを阻害する要因の一つになっていた。eSIMならユーザーがプロファイルを書き換えるだけで済む。大手キャリアがeSIMサービスの提供を行っていないのに対し、積極的なのがMVNO(仮想移動体通信事業者)だ。回線切り替えのハードルが下がり、新たなユーザーを得やすくなると期待する。

 MVNO大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)は、「データプラン ゼロ」というeSIM向けのサービスを3月から始めた。iPhoneの場合、通常のSIMカードを使った通信とeSIMを使った通信が併用できる。音声通話は大手キャリアをそのまま使い、データ通信だけIIJのeSIMサービスを使うことを提案する。「大手キャリアでeSIM対応のiPhoneを使っているユーザーは非常に多い」(IIJの亀井正浩コンシューマサービス部長)。1GB単位で使えるようにし、料金は1GB当たり450円と低く抑えた。全くデータ容量を使わない月は150円支払えばいい。「大手キャリアで月間のデータ容量の上限に達したとき、IIJに切り替えて使うことを想定している」(亀井氏)

 KDDI傘下でIoT向け無線通信サービスを提供するソラコム(東京・世田谷)は、2月からeSIMサービス「ソラコムモバイル」を始めた。ターゲットに据えるのは海外旅行者だ。

日経ビジネス2020年6月29日号 74~76ページより目次