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スーパーマーケットの店頭に並ぶ野菜や果物を覆う、透明な包装フィルム。見た目ではほとんど分からないが、鮮度を保つための機能が大きく進化を遂げている。長期保存が可能になれば農家が販路拡大しやすくなり、フードロスや物流など社会課題の解決にもつながる。

 透明のフィルムで包まれた「シャインマスカット」。味や香りはスーパーマーケットや百貨店の店頭に並んでいる高級ぶどうと変わらない。だが、異なるのは収穫時期だ。手にしたシャインマスカットが収穫されたのは半年以上前のこと。大がかりな保存技術で凍らせてよみがえらせたのではなく、1枚の透明なフィルムでくるんだだけだ。

 三井化学はこうした果物を長期保存できる法人向けの特殊な食品包装フィルム「アドフレッシュ」を開発した。

 触っても匂いを嗅いでも食品用のただのビニール袋と変わらないアドフレッシュの技術は、植物の呼吸の仕組みを活用した。特殊な樹脂とフィルム材料を使い、袋の中の酸素と二酸化炭素(CO2)の量を調節し、果物が「眠り」につくように設定する。

果物や野菜を「休眠状態」に

 果物や野菜などの青果物は収穫後も生命活動を続け、呼吸する。果実部分などが養分を消費してしまうため、味や品質の低下につながる。

 卸や小売店などは青果物の呼吸を抑えようと低温で輸送したり、専用の低温倉庫で保管したりする。日本国内の輸送環境は諸外国と比べて発達しているものの、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの陳列棚の温度は5〜10度程度。青果物の保存に理想とする0度より高く、どうしても果物が酸素を吸い込み呼吸してしまう。

 果物と外気を完全に遮断するような密閉した袋で包装した場合、内側に二酸化炭素が充満し腐敗を進める要因となってしまう。

 アドフレッシュでは材料に、酸素より二酸化炭素を3〜4倍ほど透過しやすくする「オレフィン系樹脂」を採用し、青果物が酸素を吸い込みづらくし呼吸を抑える。