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スポーツチームでデジタル技術を駆使した徹底的なデータ活用が進む。各競技の特徴を踏まえた使い方も目立つ。ラグビー、野球、サッカーから「スポーツテック」への猛進ぶりに迫る。

 2019年のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会で日本代表チームがベスト8入りの大躍進を遂げた背景には、ITを駆使した徹底的なデータ活用があった。「目標となる数字を最初に決めて、達成するのにどんな練習が必要かを考えた」。日本代表の体力強化などを担ったストレングス&コンディショニング(S&C)コーチの太田千尋氏は、こう打ち明ける。もう一人のS&Cコーチであるサイモン・ジョーンズ氏とともに、外国チームの試合の映像やデータを見ながら、W杯日本大会の本番のゲームで勝つために必要な運動量をKPI(重要業績評価)として定めた。

勝つための3指標を設定

ラグビー日本代表を皮切りに、30種類以上の競技に普及
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 KPIの一つが「ボール・イン・プレー(BIP)」。前後半合わせて80分間の試合時間のうちボールを動かしている時間のことだ。

 ラグビーはスクラムなどのセットプレーや反則などでボールの動きが止まることが多く、BIPは通常34~36分。日本代表は得意の機動力を生かしてパスやランの展開を多くしようと、BIPを40分に増やす目標を掲げた。

 一方、ラグビーは助走なしに瞬時にトップスピードに入る加速力がものをいう。日本代表は負荷の高い急加速の指標「HIA」も設けて強化。試合中に達成すべき高負荷な急加速を2.5m/s2(加速度の単位)と定義し、選手の急加速動作に占める高負荷な急加速の割合を8割以上、1分間に高負荷な急加速をする回数を2回以上にする目標を掲げた。従来、HIAは全急加速動作の7割程度だった。

 肉体に負荷のかかる動きの目標値「HIE」も設定。高負荷な急加速と急減速、衝突、自分の最高速度の8割の速さでの走行、という4つの動きの合計回数を毎分3回以上と定めた。従来は毎分2回ほどだった。

 太田コーチらは各KPIを試合で達成するための練習メニューを作った。代表候補の選手の練習量や試合での運動量などのデータをIoT(インターネット・オブ・シングズ)機器で測定。データを一元管理し、日本代表チーム内で共有した。その内容を太田コーチらが確認し、練習メニューを組み直した。