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少子高齢化や嗜好の多様化により、国内市場の縮小が続いてきたビール。2020年10月以降には減税も予定されており、「第3のビール」や発泡酒との価格差が縮まる。大手各社はうまさを引き上げ、持続させる新技術を投入し「ビール復権」を目指す。

ビールは段階的に減税される
●酒税改正の流れ
(写真=PIXTA)

 ビール類の国内の販売数量は2019年まで15年連続で減少した。人口減少に加え嗜好が多様化し、若年層を中心に「ビール離れ」が進んだためだ。一方で、缶チューハイなどの「RTD(レディ・トゥ・ドリンク)」と呼ばれる商品は、販売量を大きく伸ばしている。

 ただし大手各社は、「20年はビール復権の年になる」(ビール大手幹部)とみる。10月の酒税改正でビールが減税される一方、「第3のビール」や発泡酒の税率は段階的に引き上げられ、26年10月には350ml当たり54.25円に統一される。現在、同約50円あるビールと第3のビールの税額差がなくなる。26年にはRTDの税率も引き上げられ、ビールとの税額差が同約20円に縮まることも追い風だ。

臭みのもとを断った「黒ラベル」

 ビールへの高い税率を回避するために1990年代以降商品化された発泡酒や第3のビールは、今ではビール類市場の5割を占める。ただ「購入者に尋ねると、多くの人が『本当はビールを飲みたい』と答える」(大手幹部)という。

 冬の時代が続いてきたビールの反転攻勢の好機を迎えて、大手各社は商品力を引き上げるための新技術を相次いで投入し、市場獲得に動き出している。

 サッポロビールが3月に発売する数量限定のビール「黒ラベル エクストラブリュー」。黒ラベルの味はそのままに、うまさが長持ちする特徴を可能にしたのが、サッポロが独自に開発した「LOX(ロックス)レス大麦」だ。

 通常の大麦の麦芽には「LOX-1(ロックスワン)」と呼ばれる脂質酸化酵素が含まれている。ビールは長期保存したり高温にさらしたりすると、「カードボード臭」という段ボールの臭いに似た老化臭が生じたり、泡の持ちが悪くなったりする。LOX-1は、老化臭のもととなったり泡持ちを悪くしたりする物質の生成を助ける働きがある。

 従来ビール会社は、製造工程を改良し、LOX-1がなるべく活性化しない工夫を重ねてきた。麦やホップなどの原料開発に強みを持つサッポロは、さらに一歩踏み込み、始めからLOX-1を持たない大麦を開発した。

 岡山大学が持つ1万種類を超える在来種の麦のサンプルからLOX-1を持たない品種を発見。醸造に適した従来のビール大麦と掛け合わせたLOXレス大麦を、08年にカナダ、12年にオーストラリア、13年に日本で品種登録を出願。11年に黒ラベルの原料の一部に使用したのを皮切りに、現在は同社が年間に使用する大麦の数割を、LOXレス大麦に切り替えている。

日経ビジネス2020年2月24日号 82~84ページより目次