全3111文字

深刻な人手不足を解消しようと、飲食業でロボットを活用する動きが本格化してきた。コーヒーのようなシンプルなものから、たこ焼きなど複雑な調理もできるようになっている。配膳や皿洗いなど、飲食店に欠かせない作業もロボットに任せられる日が近づいている。

 2019年10月に開店したセブン&アイ・フードシステムズのファストフード店、「ポッポ幕張店」(千葉市)。その厨房では、人間の代わりに6つの軸が動く協働ロボット「オクトシェフ」がたこ焼きを焼いている。

6軸ロボットが多彩な動きでたこ焼きを作る
●コネクテッドロボティクスが開発したオクトシェフの動き
セブン&アイ・フードシステムズのファストフード店で稼働中の「オクトシェフ」。先端のアームを器用に動かしながら、複数の作業をこなしている(写真=2点:竹井 俊晴)

 その動きは複雑だ。まず定位置にセットされた油壷をつかみ、鉄板の48個の穴に油が入るように一筆書きで動いていく。鉄板を振動させて油が広がったら、生地が入っている容器をつかんで穴に流し込む。事前にタコやネギなどの具を並べておいたトレーを鉄板上に移動させ、具を穴に落としていく。

 再び生地を流し込み、へら状の道具で表面をならして均等にする。1分半ほど焼けるのを待ち、今度は4本の串が刺さった道具でたこ焼きをひっくり返す。この作業を繰り返し、約15分できれいな球状のたこ焼きが完成した。

 同時に2枚の鉄板を使えば、96個のたこ焼きが一気にできる。盛り付けてソースや鰹節をかけるのは人間の仕事だが、「焼いている間はほかの仕事ができる」(渡邉由香店長)。この日もロボットが焼いている間、従業員はラーメンなど別の料理を仕込んでいた。

 「こんなにたくさんの作業をこなせるロボットはほかにない」。オクトシェフを開発したコネクテッドロボティクス(東京都小金井市)の沢登哲也社長はこう話す。

 オクトシェフはレンタル形式で、初期費用が300万円、月々の利用料は約20万円。休憩や休日が不要で、作業を習熟するまで通常は1~2カ月かかる研修期間も必要ない。人手不足に悩む飲食店の選択肢になり得る価格設定にした。

 人間のすぐそばで動く協働ロボットは一般的に、物をつかんで移動させ、別の場所に置く「ピック&プレイス」と呼ばれる動きが基本となる。オクトシェフの場合、鉄板に生地などを落とす際、容器の底に設けたふたを開けるためグリッパーのつまみを調節。生地を平らにならすときには力加減を調節しながらアームを移動させる。ひっくり返すときはハンド部分が円を描くといった複数の動きを組み合わせている。

 開発陣がたこ焼きづくりの工程や環境を深く理解したことが完成のカギだった。開発で特に苦心したのは、ひっくり返す作業だったという。回転速度などハンドの動きを改善してもなかなかうまくひっくり返らない時があり、出来にむらがあった。注意深く調べると「うまくひっくり返らないのは鉄板の状態が悪いとき」(沢登氏)と分かった。

 鉄板に残った油やかすが酸化すると生地がひっかかるからだ。そこで、ロボットが油をひく前に、従業員が鉄板をきれいにする作業を加えた。生地の温度が一定でないと焼き加減に影響するため、常に冷やした生地を毎回ポンプでくみ上げる仕組みを採用した。

 「ロボットだけではなく、材料や熱化学などにも興味がある」という沢登氏は、店舗のオペレーションや材料、レシピなど、ロボット自体の研究以外にも多くの時間を充てているという。

日経ビジネス2020年1月13日号 70~72ページより目次