非効率な手順が残る企業の受発注業務が大きく変わりつつある。次世代のEDI(電子データ交換)は企業の業務効率を高める可能性がある。今後の税額票インボイス)導入などを見据え、企業は導入を進める。
日本の受発注システムを変える起爆剤として注目を集めるのが、企業間で受注、発注、納品といった取引に関わるデータをやり取りするEDI(電子データ交換)の新仕様「中小企業共通EDI(共通EDI)」だ。
共通EDIはITコーディネータ協会(ITCA)が中小企業の視点で考案した仕様だ。2018年3月に初版を公開、19年6月には軽減税率に対応した第2版にバージョンアップした。
異なるEDI同士をつなげる
名称に「中小企業」とあるが、中小企業の取引先である大企業にも普及が見込まれる。共通EDIの特徴を一言で言えば「異なるEDI同士をつなげること」となる。データ仕様の違いを吸収・変換するITサービスを介することで、異なるEDIを使う企業同士でも受発注データをやり取りできるようにする。その分、業務時間を短縮できる(下図参照)。
共通EDIを軸とした受発注革命が及ぼす影響は、受注や発注の業務にとどまらない。蓄積した取引データを活用することで、企業間決済の自動化から売掛金の早期回収、低金利の資金調達までにつながる可能性がある。
これまで発注者である大企業は、受注者である下請けの中小企業に対して独自のEDIを導入させてきた。1990年代に導入が進んだISDN(総合デジタル通信網)ベースのEDIが典型例だ。2000年代以降はインターネットとウェブブラウザーを利用する「Web-EDI」の導入が進んだ。業界ごとの標準的なEDIを整備する動きもあった。
これらのEDIはいずれもお金を払う側の大企業が発注者として主導権を握っており、「発注者にメリットがある一方、受注者にはあまり利点がない」(ピー・シー・エーの水谷学取締役相談役)ものだった。このことが中小企業への普及を遅らせた。ITCAによると、EDIを活用する中小企業は全体の約2割にとどまる。結果として大企業もファクスなどによる非効率な業務を継続せざるを得なかった。
既存のEDIが同じ通信サービスの会員同士しかつながらない「パソコン通信」だったとすれば、共通EDIは垣根を越えてつながる「インターネット」を目指す。こうした特徴から共通EDIは「次世代のEDI」とも呼ばれ、普及への期待が高まっている(下図参照)。
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