センサーなどでオフィス内の多様なデータを収集し、空間づくりに生かす動きが進んでいる。気温や人の居場所、ストレス度などを分析し、快適さや効率性などを高める狙いだ。働き方の多様化やシェアオフィスなどの普及により、人の流動性の高さに対応する動きが広がっている。
東京・丸の内に7月にオープンしたあるオフィス。緑豊かな開放的な空間には天井から円柱状のスポット照明がつり下げられ、まるでカフェのような机や椅子が並ぶ。

一見すると、最近増えてきたおしゃれなオフィスだが、ほかには無い特徴がある。照明に紛れて設置された無数のセンサーが、温度や照度などの環境データ、さらに利用者の位置情報を絶えず集めている点だ。
このオフィスは、ダイキン工業やパナソニック、TOTOなど9社が集まりオープンさせたシェアオフィス「point 0 marunouchi(ポイントゼロ マルノウチ)」。各社は自社の技術を生かしてオフィス空間に関するサービスを導入し、評価する実験場と位置づける。

例えば、ダイキン工業が目指すのはオフィス内で働く人のデータに基づく空調制御だ。利用者のスマートフォンやビーコンから、その人の位置情報を取得。天井に設置した画像センサーの情報と組み合わせることで、誰がどの席に座っているのかがリアルタイムかつ高精度で分かるようになる。

このデータを基に「暑がり」「寒がり」など個人に合わせて空調を制御する。床の至る所に設置された吹き出し口からの風量をきめ細かく調節することで、個々に最適化した温度にすることが可能だ。冷房を効かせた真夏のオフィスで、寒そうにカーディガンを羽織る社員がいなくなるというわけだ。

「従来はいかに均一な空間を作るかが重要だった。今は、その場所にいる人数や人物が毎日違うという状況にどう対応するかが課題になっている」。ダイキン工業でこのプロジェクトを担当するテクノロジー・イノベーションセンターの足利朋義主任技師はこう話す。
パナソニックもこのシェアオフィスで、働く人が集中できる照明システムなどを実験しているほか、空港の入出国ゲートに使用されている顔認証システムを使った入退室管理システムを導入している。
顔認証の場合、空港ではパスポートの写真と比較できるが、オフィスでは多ければ数万人のデータベースの中から個人を特定する技術が求められる。
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