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建物や壁などに映像を投映するプロジェクションマッピングが進化を遂げている。動くものに追従して投映できるようになり、手術時に患部を把握するなど娯楽以外の用途が広がる。建設現場や工場で作業手順を示すなど、「光る図面」として産業分野にも導入されつつある。

素早い動きにも光が追従し、舞台演出の幅は広がっている(写真=Tokyo 2020)

 照明が落とされた舞台の上で、新体操の選手が舞いながらスティックを振るたび、スクリーンに映し出された光のリボンが素早く円を描く──。

 今年7月24日、東京国際フォーラムで開かれた東京五輪の1年前セレモニー。選手が振るスティックを光の帯が追いかけ続け、あたかもスティックにリボンが付いているように見える。この演出に用いられたのが、パナソニックが開発した「高速追従型」のプロジェクションマッピングシステムだ。

 これまで、プロジェクションマッピングは建物や壁など静止物への映像の投映が一般的だった。それを動く物体にも投映できるようにしたのが、今回披露された新技術だ。

 仕組みはこうだ。スティックの先端に付けられた特殊なマーカーが赤外線の光を受けると、高速度カメラが位置を捉えたのち、プロジェクターが適切な位置を割り出して投映する。わずか1000分の2秒という遅延で、肉眼では時間のずれを感じさせない。

 2016年に技術が確立した高速追従プロジェクションマッピングは、当初、明るさが1000ルーメンとその場に少しでも外から光が入ると見えなくなるレベルで実用化には十分でなかった。パナソニックは18年に2万7000ルーメンまで引き上げることに成功、今回の披露に至った。

 動体への投映ができるようになったことで、エンターテインメントでの利用の幅は一段と広がる。

 今までこうしたショーでは、ダンサーの側がプロジェクションマッピングの動きに合わせていたため身体への負担は大きかった。高速追従技術が進化したことでプロジェクションマッピングの方がダンサーの動きに合わせることができるようになり、俊敏で躍動感ある高いパフォーマンスの実現が可能になる。パナソニック担当者は「中国を中心に広がりをみせるeスポーツや体を動かす室内ゲームでも、応用できる場面は増えていく」とする。

日経ビジネス2019年10月14日号 74~76ページより目次